P-IV-70
胸骨下方切開のMICSによる主肺動脈周辺の手術の工夫
杏林大学医学部心臓血管外科
石田良一,大岩 博,本田克彦,須藤憲一

【目的】小切開による開心術は,手術創の縮小や入院期間の短縮など多くの利点がある.しかし,術野の問題から困難な症例もある.今回,我々は胸骨下方切開のMICSによる主肺動脈周辺の手術の工夫を報告する.【方法】対象はMICSにて施行した31例(ASD 22例,VSD 7 例,PAPVC 2 例)中のVSDI型 2 例,VSDII型 + PDA 1 例,VSD muscular outlet 1 例,ASD + PS 2 例(うちPLSVC 1 例),ASD + PLSVC 1 例である.当院での標準MICS手術方法は皮切を乳頭レベルから下方に身長の約 5%にして,上縁を牽引機で頭側に引き上げ,剣状突起から第 3 肋間レベルまで胸骨部分切開を行う.右心耳にカニュレーション用のタバコ縫合を置き,これを尾側に牽引固定し心頭側部分の視野を確保.また,大動脈基部にフェルト付糸 2 針でtraction sutureを置き,これも尾側に牽引固定しカニュレーション部位の視野と静止化が確保する.VSDI型及びPSに対しては,主肺動脈分岐部上縁と心膜の間を剥離することにより主肺動脈の可動性を増し,更に,RVOTに 2 針でtraction sutureを置き,これも尾側に牽引し肺動脈を下方に引き下げることで施行できた.PDA合併例では第 2 肋間レベルまで胸骨部分切開を行うこと,人工心肺開始し,左房ベントを行うことで心容量を減らすことで施行できた.VSD muscular outletに対してはRVOT切開にてパッチ閉鎖した.PLSVCに対しては冠静脈洞にホーリーカテーテルを挿入し吸引回路に接続し術野のコントロールをした.【結果】術中トラブルや合併症もなく,全例経過良好で退院した.【考察】主肺動脈周辺の症例に対しては胸骨上縁切開によるMICSで行うことが多いが,今回,我々は胸骨下方切開のMICSによるapproachで安全かつ容易に施行できた.

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