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P-V-56 |
心および血管抑制型神経調節性失神例に対するピルメノール,ミドドリン併用療法の経験 |
東京医科歯科大学医学部発生発達病態学 / 小児科
鈴木奈都子,今村公俊,脇本博子,土井庄三郎,泉田直己 |
【背景】神経調節性失神は失神の鑑別に重要であるが,その治療方針は十分確立されていない.私達は,心抑制型から後に血管抑制型の病像が加わった症例に対してHead up tilt test (HUT)による評価で有効に薬物治療できた経験を得たので報告する.【症例】16歳の男児.野球部練習後,立位でミーティング中に失神した.8 カ月後,再度失神し,その時一過性に心房細動様の心電図がみられていた.当科受診時,心電図,負荷心電図,ホルター心電図,脳波で異常なく起立性調節障害の診断基準も満たさなかった.心房細動もその後みられていない.HUTでは開始約 8 分後に徐脈出現の後,約 5 秒間の心停止となり失神したため,心抑制型の神経調節性失神と診断した.生活指導とともにジソピラミド300mg/日開始し,3 週間後のHUTでは11分で同様の心停止,失神がみられ,同薬は無効と考えた.ピルメノール200mg/日に変更し,3 週間後のHUTでは20分間無症状で,イソプロテレノール負荷HUTでも失神はみられなかった.同薬を有効と判定し服薬を継続したが,3 カ月後に安静時の動悸と少しぼっとするという訴えがあった.HUTでは14分後に気分不快とともに血圧が低下し,その後心拍数が57/分まで低下し失神する血管抑制型の病像を示した.これに対して,ミドドリン 4mg/日の内服を追加した後は,症状の訴えはなく,併用効果判定のため行ったHUTでも15分間で陰性,その後のイソプロテレノール負荷HUTでも失神は見られなかった.【考察・結語】(1) 心抑制型病像時は,ピルメノールがジソピラミドより高い有効性を示した.これは,ピルメノールが有する心臓への高い選択的抗コリン作用によるものと考えられた.(2) 混合型病像時のミドドリンの併用は有効で,その効果は末梢血管収縮作用によるものと考えられた.(3) 神経調節性失神の治療は,病態に応じた薬物の選択が重要である. |
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