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乳児期に発症した特発性心室細動の 1 例
山梨医科大学小児科1),山梨医科大学第二内科2),山梨医科大学第二外科3),新潟大学医学部第二外科4)
内藤 敦1),星合美奈子1),駒井孝行1),角野敏恵1),小泉敬一1),梅谷 健2),吉井新平3),鈴木章司3),渡辺 弘4),中澤眞平1)

【はじめに】乳児期に心室細動をきたす疾患として,QT延長症候群,Brugada症候群,カテコラミン感受性多形性心室瀕拍などが知られており,いずれも乳児突然死症候群との関連が深いと考えられている.今回,我々は心室細動,呼吸停止で発見され,その後も心室細動を繰り返す 2 カ月の症例を経験したので報告する.【症例】生後 2 カ月の女児.哺乳後,突然啼泣あり,顔色不良と下顎呼吸がみられたため近医受診.10分後に近医に到着した時には心室細動,呼吸停止の状態であり,挿管,心臓マッサージ,Epinephrineの気管内投与にて心拍再開し,精査,加療目的で当院に搬送された.【経過】来院時,体重 6kg,心拍数170/分,呼吸数30/分,血圧67/27mmHg,体温36℃.血液検査上電解質異常なく,アンモニアの上昇もなかった.胸部X-P上,誤嚥を疑わせる所見はなし.心エコー上も心内奇形,冠動脈異常はなく,頭部CT,脳波も異常は認められなかった.その後,状態が回復したため抜管してミルクも再開していたが,初回発作から 1 カ月後より約10日おきに続けて 3 回の心室細動を繰り返した.いずれも突然の啼泣に引き続き心室細動をきたしており,1 回は心臓マッサージと刺激にて回復したが,2 回は30~50JのCardioversionを必要とした.入院中のHolter心電図上,Brugada様の心電図変化は認められなかったが,QTcは0.45~0.52と延長傾向を示していた.発作時にはPVCやVTの先行はなく,突然Vfに移行していた.なお,家族歴には突然死はなく,両親のQTcに延長はみられなかった.3 回目の発作後,Proplanolol 0.5mg/kg/day,Mexiletine 10mg/kg/dayの内服を開始し,5 日後に準緊急でImplantable Cardioverter Defibrillator(Medtronic GEM2 VR7229)の植え込み術を施行した.【結語】乳児期に心室細動を繰り返す症例を経験した.乳児期発症の致死性不整脈の治療方針にはまだ確立されたものはなく,今後も慎重に経過を観察していきたい.

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