P-V-66
ペースメーカー治療が継続されている術後完全房室ブロックを合併したダウン症候群症例における,遠隔期心不全についての検討
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学心臓血管外科2)
小林俊樹1),先崎秀明1),増谷 聡1),石戸博隆1),竹田津未生1),星 礼一1),小林 順1),朝野晴彦2)

【目的】ダウン症候群の心臓手術後に完全房室ブロック(CAVB)を生じ,ペースメーカー治療(PMT)を行っている症例において,その遠隔期に急速な心機能低下を合併する症例を経験した.現在,抗心不全治療を行い経過観察が行われているが,ダウン症特有の加齢変化に起因する可能性も推察されるため報告する.【症例】症例 1,9 歳女児,心室中隔欠損,4 歳に行われた心内修復術直後にCAVBを合併しVVI modeのPMTが行われていたが心機能低下を見たためDDD modeに変更された.Mode変更後も駆出率,左室拡張期末期径,心不全液性因子の悪化を示している.症例 2,9 歳男児,完全心内膜症欠損,13カ月時に心内修復施行,5 歳時にCAVBのため紹介され,VVI modeのPMTが開始された.8 歳時より駆出率の低下と心不全液性因子の増加が見られたが,経静脈アクセスが閉塞しているためmode変更は断念された.2 症例とも術後には心機能および肺血圧は正常化を示しておりPMT以外の治療は行われていなかった.【治療及び経過】利尿剤,ACE阻害剤またはATI阻害剤,β遮断剤の投与が開始された.症例 1 では心機能の改善に伴い活動性向上も観察された.症例 2 では心機能の増悪傾向が無くなり,軽度の改善を示している.【考察及び結語】ダウン症の加齢速度は健常人の約1.5倍程度と言われており,ストレス負荷に伴うその反応は健常人より大きいと言われている.非生理的なPMTがダウン症の心筋にストレス負荷となり,心筋の疲弊による心不全を促進している可能性がある.今後,非染色体異常のPMT症例や非PMTの心臓手術後ダウン症に対して心不全液性因子などの検索を行い,PMTの与えている影響やダウン症に対してよりストレスの少ないPMT mode設定などを検討していく必要があると思われた.

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