B-III-3
ファロー四徴症根治術後のVT症例に対する心拍変動解析
名古屋大学大学院医学研究科小児科学1),あいち小児保健医療総合センター2),先天性心疾患術後遠隔期不整脈研究班3)
加藤太一1),安田東始哲1),長嶋正實2),中澤 誠(班長)3)

【背景】ファロー四徴症(TOF)根治術後の遠隔期の死亡率は 8%で,3%が突然死とされるが突然死をきたす致死的不整脈の危険因子は不明である.一方,心拍変動(HRV)解析は各種心疾患において予後の指標となりうる.【目的】TOF根治術後の心室頻拍(VT)発症の危険因子をHRV解析により検討すること.【対象】TOF根治術後にVTを来した19例中VT発症時のホルター心電図にてHRVの解析が可能であった12例をVT群として解析した.12例は男性 7 人,女性 5 人.根治術時年齢は4.7 ± 2.6歳,ホルター心電図記録時年齢は18.1 ± 5.2歳であった.対照群として根治術時およびホルター心電図記録時年齢がVT群と有意差がなく,心不全およびVT既往のないTOF根治術後の12例をあわせて解析した.【方法】夜間安静睡眠時洞調律1024拍についてフクダ電子製SCM6000により最大エントロピー法を用いてLF(0.04─0.15Hz),HF(0.15─0.40Hz),total power(TP),LF/HFの 4 項目について周波数領域の解析を行った.各項目のVT群と対照群とにおける比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた.【結果】VT群では対照群に対しHF(333 ± 176ms2 vs. 909 ± 645ms2,p < 0.05)およびTP(1099 ± 733ms2 vs. 2249 ± 1548ms2,p < 0.05)の有意な低下を認めた.LF(164 ± 72ms2 vs. 413 ± 418 ms2)およびLF/HF(0.66 ± 0.41 vs. 0.46 ± 0.31)については両群間で有意差は認められなかった.【結論】TOF根治術後患者において夜間安静睡眠時のHFまたはTPの低下はVT発症の危険因子である可能性が示唆された.
※この研究は「厚生労働省循環器病研究委託費12公─11」による研究成果である.

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