B-III-8
小児のQT時間における年齢の影響およびQT延長症候群の頻度
鹿児島大学医学部小児科1),QT延長症候群のスクリーニングおよび管理基準に関する研究委員会2)
福重寿郎1),吉永正夫1,2),島子敦史1),西順一郎1),河野幸春1),野村裕一1),宮田晃一郎1),柴田利満2),長嶋正實2),新村一郎2)

【目的】QT延長症候群(LQTS)は,現在まで 5 つの原因遺伝子が判明しており,そのうち最も多いLQTS 1 とLQTS 2 では,9 歳から12歳で心臓関連症状が始まるとされている.しかし,健常児およびLQTS児における加齢によるQT間隔の変化は詳細には検討されていない.同一児の小学 1 年生時と中学 1 年生時でのQT間隔を測定し,年齢による変化を検討し,またLQTS児の頻度を算出した.【対象及び方法】1994年度に学校心臓検診を受診した小学 1 年生4,655名について,同一児の 6 年後のQT間隔を測定した.LQTSの診断には,Bazettの式(QTc = QT/RR1/2)で補正したQT間隔と,T波の形態にてスクリーニングした.心拍数75回 / 分以上の児は,べき指数にて補正した値(QT/RR0.31),もしくはFridericiaの式(QT/RR1/3)を参考にした.LQTSが疑われた児は,既往歴,理学所見をとり,運動負荷試験および顔面浸水負荷試験を施行した.最終診断は,日本小児循環器学会QT延長症候群に関する研究委員会の 4 名が行った.【結果】女児では小学校 1 年生時に男児よりも短かった補正QT間隔が,中学 1 年生になるまでの間に男児よりも大きく変化し,QT時間の性差はこれまでの報告より早く始まっていた.9 名のLQTS疑い児のうち,8 名に対して精査を行った.最終的にLQTSの診断となった児は 4 名で,全員非家族性であり,小学校 1 年生時は心電図上LQTSに特徴的な所見はみられなかった.LQTS児の頻度は1/1,164人であった.【考察と結論】これまでの報告では,14歳まではQT間隔に性差はみられないと考えられていたが,今回の研究では女児のQT間隔の延長は男児よりも早く始まっていた.非家族性LQTS児の心電図上のQT延長は小学校の 6 年間で始まり,9 歳から12歳で心臓関連症状が起こり始めることを示唆していた.LQTS児の頻度は1/10,000人くらいと考えられていたが,実際の頻度は1/1,164人とそれよりも多かった.

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