B-V-2
成人期に達した修正大血管転位症
天理よろづ相談所病院小児循環器科
松村正彦,須田憲治,田村時緒

【背景】修正大血管転位症は比較的まれな先天性心疾患であるが,三尖弁閉鎖不全に対する人工弁置換(TVR)や房室伝導障害の進行に伴うペースメーカー(PM)植込みなどその予後が問題とされる.【目的】成人期の修正大血管転位症の臨床像を明らかにすること.【対象】1971年から2001年までの30年間に入院した修正大血管転位の症例のうち,カルテが追跡可能で18歳以上まで生存が確認された30例.うち男性17例,女性13例.年齢は18歳から65歳(中央値26歳).観察期間は 5 年から30年(平均21 ± 7 年).【結果】(1) 合併奇形の内訳(重複を含む)は,VSDが最も多く20例(67%),PS 17例,ASD 5 例,PDA 1 例,PA 1 例,右胸心 4 例,有意の合併奇形のないものが 7 例(23%)であった.(2) 手術:1 回12例(Rastelli 5,TVR 4,VSD 1,PS 1,ASD 1),2 回 8 例(VSDあるいはPS手術後TVR 4,Rastelli後TVR 2,Rastelli後redo 2),3 回 1 例(シャント手術 2 回後Rastelli),未手術 9 例(30%).(3) 三尖弁逆流:なし 7 例,1 度 8 例,2 度 4 例,3 度 1 例,TVR 10例(33%),うち合併奇形あるもの8/23,ないもの2/7.TVR施行時年齢は 3 歳から54歳(平均20歳).(4) 心電図異常:房室ブロックは 7 例(うち 6 例が,10歳代と20歳代),1 度が 3 例,3 度が 4 例でうちPM植込みは 2 例.他にAF + Af,PATが各 1 例.異常所見なしが22例.(5) 死亡例は 3 例で,手術後心不全,交通事故死,自死が各 1 例.(6) 1 例で出産を経験していた.(7) 全例NYHA 1 度であった.【結論】合併奇形ではVSD,PSが多かった.TVRは合併奇形の有無では有意差を認めなかった.また施行時の平均年齢は20歳で,必ずしも年長者に多いわけではなかった.房室ブロックは 1 度が 3 例,3 度が 4 例で,むしろ若年者に多く認めた.PM植込みは 2 例と少なかった.

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