V-II-4
大動脈ホモグラフト(9mm)を用いて基部置換術を施行し救命し得た先天性ASの 1 例
東京大学医学部心臓外科
高岡哲弘,村上 新,小林城太郎,前田克英,高山博夫,高本眞一

【はじめに】近年,先天性ASに対してはRoss手術が適応されることが多いが,PRを伴っている場合はその適応でない.今回,大動脈バルーン拡大術(PTAV)後に高度ARを来した先天性AS,MR,PSRの症例に対し 9mmの大動脈ホモグラフトを用いて基部置換術を施行し良好に経過したので報告する.【症例】4 カ月男児,体重3.7kg.在胎40週2800gにて出生.生直後より心雑音指摘され心エコーでASと診断された.日齢 6 と46にPTAV施行し高度ARを来し心不全となった.心エコーではAS(弁輪径 7mm),高度AR,中等度MR,PSR,PDAの診断であった.【手術】通常の体外循環を確立後,冷却中にVFとなり,大動脈を切離し直接左右の冠動脈へ心筋保護液を注入.大動脈弁は 3 弁でdysplasticであり,PTAVによると思われるLCC及び僧帽弁前尖の裂傷がみられた.大動脈弁尖を切除した後の弁輪径は10mm.左右の冠動脈ボタンをくり抜き,CryoLife社製 9mm大動脈ホモグラフトを弁輪に縫合.左右のcoronary sinusは6─0のmonofilament糸の連続,non coronary sinusは結節縫合を用いた.止血の為に縫合線に心膜ストリップをいれた.ホモグラフトは弁の 2cm上方で切離,左右のsinusにあたる部位にスリットを入れ,冠動脈ボタンを移植した.ホモグラフトと上行大動脈は連続縫合した.遮断解除後,MPAを縦切開,内腔からPDAを閉鎖した.肺動脈弁は 3 弁でdysplasticであり交連切開した.人工心肺からの離脱は容易で術後経過は順調で第21病日退院した.術後のエコーでは,ARは軽度で左室機能も良好であった.【結語】PRを伴った先天性AS症例に対し,海外から小さなホモグラフトを入手し根治術を施行し良好な結果を得た.

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