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V-II-6 |
右鎖骨下動脈起始異常を含む複雑な大動脈形態を呈した左心低形成症候群に対するNorwood手術 |
静岡県立こども病院心臓血管外科
藤本欣史,坂本喜三郎,西岡雅彦,太田教隆,上原京勲,塚下将樹,横田通夫,角三和子 |
周術期管理の向上と,右室肺動脈間conduitの導入により急性期の肺血流調節の安全域が広がったこともあり,左心低形成症候群(HLHS)に対するNorwood術の成績は改善してきた.耐術症例を重ねていく中で,複雑なarch形態をした症例も経験するようになってきた.今回,右鎖骨下動脈起始異常(AORSCA)を含む複雑な大動脈形態をしたHLHSにNorwood術を行ったので報告する.【症例】36d,3.4kgの男児.4dにショックで緊急入院,HLHS,AS,MS,PDAと診断され,N2添加で 1 カ月間管理した後,32dに当院搬送.エコーで無名動脈の分岐が確認されず,その径も細いことが確認され,AORSCAを疑って術前日にradial shotを行った.AORSCAに加え,左大動脈弓が大きく右側に反転していき,胸部下行大動脈は脊椎の右に,腹部下行大動脈は脊椎の左に位置することが判明した.【手術】動脈ラインは右浅側頭動脈と右大腿動脈に留置し,胸骨正中切開でアプローチした.右総頸動脈に吻合した 3mm人工血管から送血し,脱血は右房 1 本脱血とした.arch vesselsの剥離後,右開胸でAORSCAを同定,distal archからの起始部も同定した.AORSCAがDAoの可動性を極端に制限しており,まずAORSCAを切断した.その後AAoからarchにかけて切開し,PDA組織を切除,DAoの可動性が十分であることを確認し,DAo背側とarchの直接吻合を開始した.AAo近位側切開はmPA切断レベルとし,AAoとmPA近位端の吻合を一部行った後,背側から前面にかけて大きく異種心膜パッチにて拡大した.肺血流路は 6mmの右室肺動脈間conduitとした.【経過】術翌日に肺血流調節を行い,POD3に二期的胸骨閉鎖を終え,経過順調.【考察】(1) arch形態の把握にradial shotが有用な場合があるが,全てを診断し得ない場合もあり,注意が必要.(2) AORSCAはDAoの可動性を制限し,arch再建の障害となる可能性があり,AORSCAの処理とともに自己組織での再建に固執せず,狭窄を残さない確実なarch再建が必要. |
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