D-VI-2
ガンマグロブリン早期治療について:川崎病全国調査より
久留米大学小児科1),自治医科大学公衆衛生学2)
牟田広実1),石井正浩1),菅原洋子1),赤木禎治1),中村好一2)

【目的】川崎病早期にガンマグロブリン(GG)を投与する症例が増加しているが,できるだけ早くGG療法を開始する方がよいか,5 病日前後まで待って投与する方がよいかについて意見が分かれている.本研究の目的は,GGによる早期治療と心障害の関係について検討することである.【方法】対象は,第15,16回川崎病全国調査にて 3 病日以内に初診した患者のうち,早期群:1─3 病日にGG療法を開始された2449例,待機群:5─7 病日に治療開始された3803例に分類した計6252例.心障害として,1 カ月以内の急性期,1 カ月以降の後遺症期に分類し,それぞれ検討した.p < 0.05を有意差ありとした.【結果】(1) 特性について.両群の男女比に有意差はなかった(p = 0.180).年齢を原田のスコアの項目である 1 歳未満,1 歳以上に分類したところ,早期群で 1 歳未満の割合が有意に高かった(p < 0.001).また早期群で有意に容疑例の割合が高かった(p < 0.001).1 日GG投与量を(1─200mg,201─400mg,401─1000mg,1000 mg─)の 4 群に分類したところ,両群の分布に有意差はみられなかった(p = 0.141).(2) 割り付け要因(年齢・男女)を層別因子とするMantel-Haenszel検定をおこなった.待機群では,有意にGG再投与を受ける例が少なかった[p < 0.001,odds比0.554(95%信頼区間0.475─0.646)].急性期心障害,心後遺症とも両群の発生率に有意差を認めなかった(p = 0.356,p = 0.211).【考察】3 病日までに初診し,3 病日までに治療された群と 5─7 病日に治療開始された群で,急性期心障害,心後遺症とも発生率に有意差はみられなかった.しかし,GG再投与は早期群に有意に多かった.このことが,「早期群では再投与をすることが多いため心障害の発生率に差がなくなる」のか,または「早期群 = 症状が早く揃う重症例であるため再投与例が多い」のかは今後の検討課題である.この問題を解決するためには,多施設比較研究をおこなう必要があると考えられる.

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