D-VII-1
アントラサイクリン系薬剤による心筋障害の心エコー検査による評価
静岡県立こども病院循環器科
田中靖彦,青山愛子,大崎真樹,満下紀恵,金 成海,齋藤彰博

【背景】アントラサイクリンは容量依存性に心毒性を有し,その早期診断が投与量の調節や心筋障害に対する治療の開始に重要である.【目的】アントラサイクリンによる心筋障害をintegrated backscatterの心周期変動(CV),TEI Indexを含めた心エコー検査で早期に発見する.【対象】アントラサイクリン使用患者36例.年齢は 1─20歳(中央値12歳).アドリアマイシン(ADR)換算で150mg/m2以下をA群(14例),150以上300mg/m2未満をB群(13例),300mg/m2以上をC群(9 例)に分類した.【方法】心エコー検査で,Fractional Shortening(FS),左室のTEI Index(TEI),左室後壁におけるCVを測定し,(1) コントロール群(TEI 68例,CV 82例)と各群との比較,(2) ADR投与量との関係を検討した.【結果】(1) 各群のFS,TEI,CVはそれぞれ,コントロール群(0.35 ± 0.04,0.29 ± 0.08,9.6 ± 1.4),A群:0.34 ± 0.05,0.33 ± 0.10,9.4 ± 1.8,B群:0.31 ± 0.10,0.44 ± 0.19*,7.7 ± 2.4*,C群:0.24 ± 0.07*,0.58 ± 0.20*,5.1 ± 1.1*であった(*:コントロール群との間に有意差あり).FS,TEI,CVの異常(それぞれcutoff値0.25,0.45,6.8)はB群では,23%,38%,38%に,C群では,56%,78%,100%にみられた.(2) FS,TEI,CVとADR投与量との間にはいずれも相関がみられたが,CVで最も相関が強かった(R = 0.608).【結語】TEI,CVはFSより早期に心筋障害を診断することが可能である.従来いわれているよりも低容量で心筋障害が始まっており,投与初期より慎重な経過観察が必要である.しかし,TEI,CVなどの鋭敏な指標で異常がみられた場合に抗癌剤投与量を変更すべきかなど,今後検討すべき問題である.

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