N-VI-6
先天性心疾患をもつ子供の終末期の家族看護を考える
総合病院聖隷浜松病院
大石三枝子,酒井きくえ,森本俊子

医学技術の進歩に伴い,重篤な先天性心疾患においても,その生存率が高い数値を示すようになった現在ではあるが,依然として,外科的治療が困難な子供は少なくない.そこには疾患を受容すると同時進行で,子供に代わり両親が意思決定をしなければならないという心理的苦痛が存在する.左心低形成症候群のA君.入院当初医師より,「重い心臓病であり,強心剤と利尿剤を使用しても効果が得られないときは手術しかないが,生後まもなくであり生命危機へのリスクが高い」と言われ,悩んだ結果手術をしない決断をし緩和ケアへと移行した.初めは両親それぞれにA君に対する思いがあり,方針を決めてからも不安を抱えていた.看護師は,それをそれぞれの親としての発達課題や育ってきた背景や価値観の違いとして,肯定的に捉えた.そこで患者参画型看護計画とし,両親の思いを反映した.その結果,A君を中心に考えていけるようになり,徐々に家で見取ることの決意が固まった.訪問看護や外来との連携のもと退院が速やかに整い,僅かであったが両親が望んでいた,家に帰り家族だけの穏やかな時間を過ごすことが出来た.子供の病状が急速に変化するため,時間的余裕のない状況で看護者は短期に家族背景やそのニーズを把握し,時には瞬時にアセスメントし判断することがもとめられた.両親が心理的苦痛に向き合い自己決定していく過程を,家族看護の視点で支援していくためには「両親」と捉えるのでなく,父親・母親個々の思いを知り,それぞれの受容の段階を査定し,段階にあった看護を提供していくことで両親の思いは必ず同じ思いとなり成長していくものであるということを確信した.

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