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A-I-11 |
円錐動脈幹の発生における転写因子Tbx1の発現 |
慶應義塾大学医学部小児科1),テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター小児科分子生物学2)
山岸敬幸1),前田 潤 1,2) |
22q11.2欠失症候群は,円錐動脈幹心奇形を高率に合併する.T-box型転写因子Tbx1が,同症候群に特異的な円錐動脈幹奇形の主要な原因として注目されている.私たちは,マウスTbx1遺伝子のプロモーター領域にLacZレポーターを連結したトランスジーンをマウスに導入し,作製されたトランスジェニックマウスの胎仔にX-gal染色を行って,円錐動脈幹発生におけるTbx1の発現を経時的に検討した.Tbx1の発現は,神経堤細胞が円錐動脈幹に遊走する以前(胎生8.5日)から,円錐動脈幹中隔が形成され始める時期まで,円錐動脈幹部の心筋層と心内膜を構成する細胞に認められた.これらTbx1を発現する細胞は,側板中胚葉(予定心臓領域)由来の細胞や,神経堤由来の細胞ではなく,咽頭弓周囲の臓側中胚葉由来の細胞と考えられた.最近の研究で,この臓側中胚葉由来の細胞は,神経堤細胞が遊走するより早期から円錐動脈幹部に分布し,初期形成に関与する可能性が示されている.本研究の結果は,Tbx1がこの臓側中胚葉由来細胞の発生分化を制御することにより,円錐動脈幹形成に関与することを示唆する.さらに,私たちは遺伝子相同組換えを用いたジーンターゲティングの手法により,Tbx1の発現が正常の10~20%程度まで低下したマウス(Tbx1発現低下マウス)を作製した.Tbx1ノックアウトマウス(Tbx1の発現は 0%)では,100%に円錐動脈幹奇形,口蓋裂が認められるのに対し,今回作製されたTbx1発現低下マウスでは円錐動脈幹奇形だけが認められ,口蓋裂は認められなかった.この結果から,胎生期の円錐動脈幹形成では口蓋形成に比して,Tbx1の発現量低下に対する感受性が高いことが示唆された. |
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