S-I-7
外科手術とカテーテルインターベンションの協調による肺動脈狭窄病変の治療
静岡県立こども病院循環器科1),静岡県立こども病院心臓血管外科2)
金 成海1),青山愛子1),石川貴充1),大崎真樹1),満下紀恵1),田中靖彦1),坂本喜三郎2),横田通夫2)

【背景】先天的あるいは術後に肺動脈狭窄病変を認めることはまれではなく,右心系の後負荷や肺血流不均衡分布が顕著な場合には治療の適応となる.当施設では,初発例や乳児例に対しては,経皮的バルーン拡大術(BAP)または肺動脈形成術(内膜切除,Hegarによるブジー拡大,パッチ拡大)をまず行い,幼児以上の狭窄残存例に対してはステント留置術を行う方針としている.【対象および方法】74例の肺動脈狭窄病変(PS).主肺動脈との圧較差10mmHg以上,肺血流シンチグラムにて75:25以上の左右差,血管造影上健常部径の 1/2 以下のいずれかを選択基準とした.このうち(1)9 例,13病変に高圧バルーンによるBAP,(2)61例に手術が行われ,(3)12例に17個のPalmazステントを留置.成人期までの再拡張を見込めるサイズを選択した.【結果】PSの成因は先天的要因19(低形成,動脈管組織による縮窄),術後(体肺短絡14,肺動脈絞扼術 7,右室流出路形成術 7,UF 3,動脈スイッチ術 7)に分類された.(1)BAP:狭窄部の1.6~3.7(平均2.45)倍径のバルーンにより拡張したが病変はrecoilし内膜断裂も起こらず有効性は乏しかった.(2)49例は右室流出路形成やGlenn,Fontan等の次段階手術と同時に,12例は単独で肺動脈形成術を施行.17例に狭窄病変が残存した.(3)ステント留置後病変部は1.5~7.1(平均4.4)mmから6.0~14.0(平均10.0)mmに拡大し,圧較差は 0~84(平均34.5)mmHgから 0~23(平均8.2)mmHgに減少した.分岐部にまたがった狭窄病変には 2 個のステントをkissing-balloonにより同時に留置した(Y-ステント法).PS指摘より 5 年以上経過した 2 例ではシンチグラム上左右差の改善が得られなかった.【考察】PSに肺動脈形成術とステント留置術は有効であり,病変部の性質や患児の体格により両者を選択できる.また,手術で到達困難な分岐部狭窄に対してはY-ステント法を組み合わせることが有用である.

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