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B-I-1 |
ドプラ心エコー法による正常胎児および心不全胎児における左冠動脈前下行枝血流速度 |
秋田大学医学部小児科
青木三枝子,原田健二,田村真通,豊野学朋,安岡健二 |
【背景】胎児は子宮内において,心筋血流を増加させ,その低酸素環境に適応すると推測される.さらに心不全がある場合,冠動脈血流を増加させ心負荷状態に適応すると予想される.しかしながら胎児冠動脈血流に関する知見は少ない.【目的】正常および心不全胎児の胎児冠動脈血流を計測すること.【方法】対象は正常胎児15例(在胎週数:29±4 週),心不全胎児 2 例(在胎週数:33±1 週).カラーおよびパルスドプラ法を用いて胎児冠動脈血流の検出を試み,大動脈洞レベルでの短軸像において,左冠動脈前下行枝(LAD)血流を計測した.最大血流速度(MPV),average peak flow velocity(APV),血流速度時間積分値(FVI)を同時に計測した.両親に検査の内容を説明し同意を得た.【結果】冠動脈血流はこれまでの小児の報告と同様,拡張期優位の血流波形を示した.正常胎児のMPV,APV,FVIはそれぞれ49±3cm/sec,33±5cm/sec,6.2±1.1cmであり,在胎週数の増加に伴い有意に減少した(MPV:r = -0.56,p = 0.03,APV:r = -0.71,p = 0.002,FVI:r = -0.59,p = 0.03).新生児と比較して(MPV;18±4cm/sec,APV;11±3cm/sec,FVI;3.9±0.9cm),正常胎児のMPV,APV,FVIは有意に高値であった(p <0.01).さらに心拡大,三尖弁閉鎖不全,浮腫を認めた心不全胎児 2 例では,Tei index 0.8と高値(正常0.55±0.05)であり,冠動脈血流速度APVはそれぞれ38cm/sec,および35cm/secと正常範囲内であった.【結論】正常胎児のLAD血流速度は高値であり,子宮内低酸素環境に心筋血流の増加で適応すると示唆される.さらに心不全胎児は心筋酸素需要の増大にもかかわらず冠動脈血流を増加できず,さらなる心機能低下を招くと推測される.本研究で得られた正常および心不全胎児冠血流の知見は子宮内胎児循環不全の機序の理解に有用と考えられる. |
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