V-1
外科手術支援用ロボットを使用した胸腔鏡下動脈管閉鎖術の経験
神奈川県立こども医療センター心臓血管外科
宮地 鑑,長田信洋,小林城太郎,高崎泰一,縄田 寛

【目的】近年,外科手術支援用ロボットを使用した手術がさまざまな領域で広く行われるようになってきた.しかしながら小児心臓血管外科手術ではロボットの使用経験はいまだ少ないのが現状である.当センターでは,動脈管開存症(PDA)に対して胸腔鏡下動脈管閉鎖術(VATSPDA)を施行してきた.音声によるコントロールが可能な手術支援用ロボット(AESOP 3000 system,Computer Motion社)を使用したVATSPDAの手術経験を報告する.【ロボットシステム】AESOP 3000 systemはポジショニング・アームとHERMES音声コントローラで構成されたコンピュータ・ロボットシステムである.手術前日に術者自身の声による指示命令をPCカードに記録した.術者は患者の左側に,助手は右側に立ち,ビデオモニタは右側頭側に置いた.ロボットアームは術者の左側,患者の尾側に設置した.【症例】6 カ月,4.6kg,Down症,肺高血圧症の男児.肺体血流比は3.6,PDA径は5.4mmであった.気管内挿管後,2Frの血栓摘除用のバルーンカテーテルによる右片肺分離換気を確立した.右側臥位にて背側より12,5,5,4mmの 4 箇所の小切開をおいて,ポートを胸腔内に挿入した.4mmの硬性内視鏡を肩甲骨直下より挿入し,ロボットアームに固定した.術者の音声指示に従ってロボットアームは完全に動作し,良好な視野が確保された.PDA周囲を十分剥離したのち,クリップ 1 個でPDAを完全閉鎖した.術中経食道エコーにて遺残短絡のないことを確認,手術を終了した.手術時間は60分で,患者は手術室で抜管,術翌日に退院した.【総括】手術支援用ロボットはVATSPDAにおいて安定した良好な手術視野を確保できる安全かつ確実な装置である.体重 4kg台の乳児において要求される内視鏡の微細な動作も音声コントロールによって十分に可能であった.

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