V-6
体重3.4kgのsevere ASR症例に対するRoss手術
東京大学医学部心臓外科
高岡哲弘,村上 新,宮本隆司,平田康隆,北堀和男,高本眞一

新生児期にAS,CoA,PDAに対しPDA ligation,coarctectomy(end to end anastomosis),open aortic commissurotomyを施行後,今回,6 カ月,体重3.4kgでRoss手術を施行し,良好な結果を得たsevere ASRの症例を供覧する.胸骨再正中切開し中等度の癒着を剥離.通常の体外循環を確立後,28℃へ冷却.心拍動下に自己肺動脈弁を採取.まず肺動脈分岐部直下で肺動脈を離断,次いで右室側をLCAに注意しながら切開,切離した.採取した肺動脈の径は 8mmであった.大動脈遮断し,心筋保護液を大動脈基部とCSより逆行性に注入して心停止とした.まず左右の冠動脈ボタンを切離.大動脈弁は 2 尖でdysplasticであり,これをすべて切除した.大動脈弁輪径は 8mmであった.自己肺動脈を大動脈基部に 5-0 proleneの連続縫合で縫着.その際,止血目的で心膜ストリップを縫合腺にはさみこんだ.左右の冠動脈ボタンを移植後,自己肺動脈を大動脈末梢側に連続縫合した.大動脈遮断解除しあらかじめ作製した 3 弁付(0.1mm PTFE patch)10mm PTFE graftで右室流出路を再建した.人工心肺からの離脱は順調であったが,胸骨は 2 期的閉鎖とした.人工心肺時間は238分,大動脈遮断時間は135分であった.第 3 病日に閉胸,第 7 病日に抜管し,その後の経過は順調であった.【考察】critical ASに対し新生児期は弁形成で乗り切り,乳児期にRoss手術を施行し良好な結果を得た.期待した体重増加が得られず3.4kgでのRoss手術となったが,新生児期に侵襲の大きなRoss手術を回避したことは成功の一因であったと考えられた.

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