C-I-8
新しい小児用動脈ライン採血キットの開発
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設内科部門
八幡倫代,糸井利幸,吹田ちほ,岡達二郎,川北あゆみ,岩崎直哉,田中敏克,坂田耕一,白石 公,濱岡建城

【背景・目的】観血的動脈圧ラインは小児循環管理において不可欠な装備であるが,現在主流の三方活栓を用いた血液サンプリング方法は煩雑で,清潔度保持の観点からも配慮すべき点がある.われわれはこの観点から,JMS社製閉鎖式輸液用サンプリングポート(プラネクタ)を従来の動脈圧ラインキットに組み込んだ新しい小児用回路を考案した.このシステムでは通常のシリンジを直接ポートに挿入して採血が可能であると同時に,閉鎖式であるため採血時の逆流血を清潔操作下に返血することも可能である.今回,従来の三方活栓方式とプラネクタ方式を,(1)臨床使用上の操作性,(2)動脈血採血後の 1 回フラッシュ量について比較し,評価した.【方法】(1)集中治療室の医師・看護師計23名を対象としたアンケートを行った.(2)体外循環下に開心手術を受けた体重 5kg以下の乳児を三方活栓群(n = 9),プラネクタ群(n = 9)とし,採血後 1 回フラッシュ量の比較を行った.検定は対応のないt検定で行った.【結果】(1)アンケート回答者の91%がプラネクタ方式の方が操作性に優れていると評価した.(2)採血回数は三方活栓群で平均10回,プラネクタ群で平均12回であった.採血後の 1 回フラッシュ量は三方活栓群で1.2±0.2ml,プラネクタ群で1.8±0.4mlとプラネクタ群が有意に多かった(p = 0.0011).一方,動脈圧ラインを介した輸液量は 1 日総輸液量のそれぞれ5.8±2.0%,4.9±1.9%を占めており,両群に差を認めなかった(p = 0.3261).【考察】新しい動脈圧ライン採血キットは大きなトラブルなく臨床的に使用可能であった.従来の三方活栓方式と比較し,採血後のフラッシュ量は多く,低体重児では輸液負荷となる可能性が示唆され,死腔量を減らすなどの改善が必要と考えている.共同研究者:京都府立医科大学附属病院集中治療部 橋本悟,志馬伸朗

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