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D-I-19 |
完全大血管転位に対する動脈スイッチ術後の冠動脈病変 |
大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科1),大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科2)
岸本英文1),川田博昭1),三浦拓也1),秦 雅寿1),帆足孝也1),中島 徹2),萱谷 太2),稲村 昇2),石井 円2),角由紀子2) |
動脈スイッチ術後の冠動脈造影所見を中心に,手術成績を検討した.【対象】1991年 7 月~2002年 6 月までに,完全大血管転位に対し動脈スイッチ手術を行った54例のうち,肺血栓塞栓により術後急性期に失った 1 例を除く53例(I型41例,II型12例)を対象とした.【手術】冠動脈の壁内走行の 2 例(Shaher 5A)にはAubert法を行い,それ以外の症例にはJatene法(新大動脈壁をパンチアウトして移植したもの48例,壁にスリット切開を入れて移植 3 例)を行った.【成績】術後平均 1 年に行った冠動脈造影にて異常を認めなかったのは46例であったが,Aubert法を行い術中心筋梗塞を来した 1 例が術後10カ月に遠隔死亡した.退院後早期に心筋虚血を来し冠動脈造影で異常を認めたのは 2 例で,1 例(Shaher 1)は術後 2 カ月に右冠動脈の閉塞,左冠動脈口の狭窄を認め,失った.他の 1 例(Shaher 7B)は,造影で単冠動脈から分岐する左右冠動脈は全体に細く,Jatene術後 2 カ月に左前下行枝に左内胸動脈を吻合して救命した.遠隔期の冠動脈造影で冠動脈口の狭窄を認めたものは 2 例(Shaher 1,5A各 1 例)で,Aubert法を行った 1 例では壁内走行部分の冠動脈(LAD)にも狭窄を認めたが,どちらも心筋の虚血症状は認めていない.術後に冠動脈造影を行っていない 3 例中 1 例(Shaher 2B)で,心室の拡大,駆出率の低下を認めている.この症例と,術後の冠動脈造影に異常を認めた 4 例中 3 例で,スイッチ術中に冠動脈口が狭小である所見を認めていた.【結語】完全大血管転位のなかには冠動脈口の狭窄を認める症例があり,スイッチ術後に冠血流の低下を来すことがある.このような理由で術後に心筋虚血を来したShaher 7Bの単冠動脈の症例で,月齢 2 カ月に冠動脈バイパス術を行い救命することができた. |
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