E-I-8
低濃度酸素療法用の窒素ガス供給装置の作製─肺血流増加体血流低下型心疾患の安全な呼吸循環管理のために─
福岡市立こども病院循環器科
由茅直子,石川司朗,中村 真,牛ノ濱大也,佐川浩一

左心低形成症候群に代表される肺血流増加体血流低下型の心疾患では酸素吸入など肺血管抵抗を低下させる治療は基本的に避けたいが,FiO2が21%であっても重篤な心不全を呈する症例がみられる.この疾患群の救急治療目的は肺血管抵抗上昇と体循環血液量増加であり,低換気量法,二酸化炭素ガス吸入,窒素ガス吸入療法が登場した.前二者は患児に高二酸化炭素血症による頭蓋内出血や低酸素血症による中枢神経合併症の予防のため頻繁に血液ガス分析が必要で児の管理は煩雑である.最近では窒素ガスによる低濃度酸素療法が主流となり比較的管理が容易になったが,中枢神経合併症の危険性をはらむことに変わりはない.現在本治療用の専用機器はなく施設ごとに既存のガスブレンダーを用いて吸気中のFiO2を管理している.今回,低濃度酸素療法専用の小型窒素ガス供給装置を開発した.人工呼吸器回路に使用する場合,呼吸器回路吸気側の加湿器前から窒素ガスを混合する.窒素ガスブレンダー部位には熱式質量流量調節器を採用し,窒素ガスボンベおよび呼吸器回路内の圧力変動の影響を受けず正確に窒素ガスを供給(流量レンジ0.2~8L/分,応答性約 3 秒,流量精度±0.16L/分以内)できる.また,患者のYチューブ直前から吸気ガスをサンプリングし,ガルバニ酸素電池式FiO2センサーを用いて酸素濃度を正確に測定し(測定範囲:0.0~25.0%,0.1%単位,応答時間:15秒),治療中の吸気FiO2は連続記録される.FiO2は21.0~15.0%の範囲で設定可能で,フィードバック制御されモニタの酸素濃度が設定濃度から±0.5%以上に変動した場合は異常として警告が発せられる.また,一瞬でもFiO2が15.0%を下回った場合および停電時には窒素ガス供給は自動的に停止される安全機構を設け,ヘッドボックスを使用する場合も同様の制御が可能である.この窒素ガス供給装置の導入により低濃度酸素療法がより簡便になり安全性も向上することが期待される.

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