P-I-10
起立性調節障害に対する客観的評価法─起立試験における超音波検査の有用性─
順天堂大学医学部小児科
高橋 健,大久保又一,金 成彌,宮崎菜穂,佐藤圭子,大槻将弘,織田久之,稀代雅彦,秋元かつみ,山城雄一郎

【目的】起立性調節障害(orthostatic dysregulation,OD)は起立による血行動態変化から種々の症状が出現する疾患であるが,症状が多様なため評価が難しい.起立負荷心エコー法は起立時の血行動態変化を評価する上で,臨床上非侵襲的な方法であり,客観的な評価方法になりえる可能性があることを報告してきた.そこで本疾患に対し,起立負荷心エコー法を施行し,症例数を増やしその有用性について検討した.【方法】対象は,研究班の定めた診断基準によりODと診断された16名(OD群:男子 2 例,女子14名,平均13.1歳),健康児13例(N群:男子 3 例,女子10例,平均12.1歳).方法は,起立前,起立10分後に血圧,心拍数,左室拡張末期径,左室駆出率,下大静脈径,下大静脈血流流速を測定した.変化率(Δ)=(立位時の値 - 起立前の値)/(起立前の値)として求め,OD群と健康児群を比較検討した.【結果】ΔHR(OD群0.47±0.19,N群0.21±0.27,p < 0.05),Δ脈圧(OD群 -0.48±0.65,N群0.24±0.23,p < 0.05),ΔIVC径(OD群 -0.38±0.28,N群 -0.11±0.22,p < 0.05)およびΔLVDd(OD群 -0.38±0.28,N群 -0.17±0.10,p < 0.01)においてOD群とN群で有意差を認めた.またOD群において,ΔIVC-Δ脈圧間に有意な相関を認めた.【結語】OD群はN群に比較し,IVC径およびLVDdが有意に減少した.またOD群においてΔIVC径とΔ脈圧は相関を示した.これらは従来よりODの原因とされてきた静脈環流量の低下による循環動態変化を反映していると考えられる.以上より起立負荷心エコー法は簡便なODの評価法の一つとなりえる可能性が考えられた.

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