P-I-15
漏斗胸患児におけるパルスドプラ法を用いた肺血流の検討
群馬県立小児医療センター循環器科
小林 徹,小林富男,篠原 真

【はじめに】漏斗胸は胸骨,肋軟骨の変形により前胸部が陥凹する疾患で,僧帽弁逸脱や右室形態異常が合併することが知られているが,肺血流に関する検討はなされていない.今回われわれはパルスドプラ法を用いて肺動脈のflow patternを測定し,胸郭陥凹度,縦隔偏移度との検討を行った.【対象と方法】2000年10月から2002年12月までに当科を受診した心疾患がない漏斗胸患児20名と正常コントロール 9 名.胸郭の陥凹度の指標としてvertebral index(VI),frontsagittal index(FSI)を,縦隔偏移度の指標としてleft deviation index(LDI)を胸部レントゲン写真の正面像と側面像より計測した.心エコー法ではMPA,LPA,RPAにサンプリングポイントを置きパルスドプラ法を用い肺血流パターンであるATI,STIを測定した.【結果】全例左室収縮能の低下は認められず,また左室短軸像が正円であり肺高血圧の存在は否定的であった.正常群ではRPA,LPAのSTI,ATIに統計学的有意差を認めなかったが,漏斗胸群ではRPAに比べLPAはSTIは有意に高値であり(p = 0.041)ATIは有意に低値であった(p < 0.0001).ATIの左右比はVI,FSI,LDIと有意に相関し(VI:R = -0.401 p =0.03,FSI:R = 0.664 p < 0.0001,LDI:R = 0.671 p < 0.0001),STIの左右比はVIと有意に相関した(R = -0.380 p = 0.041).【結論】漏斗胸患児では肺高血圧症の存在は否定的であるため,胸郭の陥凹のため縦隔が左方に偏移し,肺動脈の圧迫や肺血管床を来し肺血流パターンの左右差が生じる可能性が示唆された.

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