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インフルエンザウイルスによる急性心筋炎の 1 剖検例
埼玉県立小児医療センター総合診療科
関島俊雄

【はじめに】急性ウイルス感染症に合併する心筋炎の頻度は不明だが,心筋炎や心膜炎を来すのはコクサッキーウイルスが多いと考えられている.今回インフルエンザB型ウイルス感染症が先行し,CPAOAのため心肺蘇生を行われたが改善せずに死亡した急性心筋炎を経験したので報告する.【症例】Y.S. 8 歳女児,主訴はCPAOA.既往歴 気管支喘息(軽症),心電図異常疑い 小学校入学時にV1に異常Q波を指摘されたが問題はなかった.現病歴 4 日前から咳,喘鳴があり 3 日前から38℃台の発熱が認められるようになった.2 日前に近医でインフルエンザB型と診断されてタミフルの処方を受けて帰宅した.前日に嘔吐が 1 回あり救急病院を受診して点滴が施行された.当日午前 8 時40分ごろ自宅で失禁し,母に付き添われてトイレに行った.母が目を離した少しの後に戻ると廊下で倒れていた.自発呼吸の有無,心拍の有無についてはわからなかったが,救急隊が到着した時点では心肺停止状態で,バックマスク換気,心臓マッサージを受けながら病院に到着した.【入院後経過】体温32℃,瞳孔散大,自発呼吸・心拍はなかった.鼻腔の迅速診断でインフルエンザB型陽性.気管内挿管,閉胸式心臓マッサージ,fluid bolus,エピネフリン静注・気管内注,DOA/DOB 10mcg/kg/min投与などを行い自己心拍が再開したが,次第にQRS波形はwideとなり,心エコー所見では心臓の収縮力はほとんどなく,軽度の心嚢液の貯留が認められ,その後も蘇生を継続したが血圧が維持できず,来院後 3 時間で死亡した.病理解剖で,左室壁の全周性の出血・壊死と心嚢液の貯留が認められた.【まとめ】インフルエンザウイルス感染症で劇症型の経過をたどるものの中には,心筋炎の合併症例が含まれている可能性があり,治療戦略において注意を要する.

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