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P-I-50 |
前方より肺動脈が起始する総動脈幹症 |
東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器小児科
山村英司,中西敏雄,中澤 誠 |
【目的】総動脈幹症(truncus arteriosus communis,TACと略す)は肺血管の起始の状態により分類されている.本症では通常,肺動脈は総動脈幹の左側方または左後方より起始する.しかし,まれに,前方より起始する症例があるとの文献上の記載があるがまとまった報告はない.【対象】1996年から2002年までに経験した肺動脈の前方起始を示すTACの 6 例(前方起始群).(右肺動脈上行大動脈起始症は除外した.)対照として1986年から2002年までにカテーテルを施行したA1型のTAC 26例を選んだ(対照群).【結果】前方起始群の 6 例中両側の肺動脈が大動脈前方から起始していたのは 1 例のみで,5 例で一側の肺動脈が上行大動脈の前方から起始しており,他方の肺動脈は大動脈から直接起始せずに動脈管ないし主要大動脈肺動脈側副血行(MAPCA)とつながっていた.左肺動脈が上行大動脈から起始している症例が 4 例,右肺動脈の上行大動脈起始が 1 例であった.他側の末梢肺動脈が動脈管を介しているものが 2 例,MAPCAから供給されているものが 3 例であった.対照群は上行大動脈から左右の肺動脈が供給され,動脈管を合併した症例はなった.前方起始群では右大動脈弓は 5 例(83%),対照群では右大動脈弓は36%であった.総動脈幹弁の弁数は 4 弁例が前方起始群で 1 例(17%),対照群で18%であった.部分肺静脈還流異常や左上大静脈遺残は前方起始群にはみられなかった.22q11欠失症候群は前方起始群で 1 例,対照群で 4 例で有意差はなかった.【結論】過去の報告ではA3型いわゆる一側肺動脈閉鎖を合併したTACでは右肺動脈の上行大動脈後方起始が多く,一側肺動脈閉鎖を合併したファロー四徴症(TOF)では左肺動脈が右室流出路とつながっていることが多いとされており,前方起始群ではTOFにより類似していた.TOFでも閉鎖側肺動脈は約半数が動脈管から,残りは側副血行からで前方起始群と類似していた. |
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