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P-I-69 |
未熟児動脈管開存に対する低酸素換気療法の経験 |
山梨県立中央病院総合周産期母子医療センター新生児科1),山梨大学医学部小児科2),山梨大学医学部第二外科3)
丹 哲士1),星合美奈子2),内藤 敦2),小泉敬一2),戸田孝子2),駒井孝行2),中澤眞平2),鈴木章司3),吉井新平3) |
【はじめに】極低出生体重児,超低出生体重児に合併した未熟児動脈管開存に対する低酸素換気療法は,有効性や安全性についての評価がまだない.今回,われわれは他の方法では救命不可能な高肺血流による重度の心不全を呈した未熟児動脈管開存症例に対して,窒素(N2)による低酸素換気療法を行い,その効果について検討した.【対象と方法】人工呼吸管理,強心利尿剤投与,インドメタシン投与等に反応せず,進行性のアシドーシスや低血圧,無尿を呈した極低出生体重児 2 例,超低出生体重児 1 例の計 3 例に対して,緊急手術までの待機に全身状態の安定化をはかるため低酸素換気療法を行った.吸入酸素濃度は18%を目標に調節し,この際の施行前後におけるSpO2,血液ガス分析,血圧,尿量の変化を検討した.【結果】出生体重1,030±386g,施行時体重926±356g,施行時間は35分~48時間だった.SpO2は施行前98.2±1.5%,施行後30分の時点で97.0±1.0%と有意に低下した(p = 0.04).統計学的な有意差はなかったが,施行前後の血液ガス分析でpHが7.21±0.29から7.33±0.18に上昇,PO2は72.8±28.1mmHgから57.1±20.9mmHgに低下した.また収縮期血圧は37.0±4.0mmHgから50.7±6.7mmHgへ上昇し,施行前 8 時間と施行後 8 時間の尿量は 0ml/kg/hrから0.88±0.35ml/kg/hrへ上昇した.全例生存し,治療を要する眼底所見の異常はなく退院時の頭部CTと脳幹聴性反応は正常だった.【まとめ】他の内科的治療で心不全のコントロールが困難な未熟児動脈管開存に対する低酸素換気療法は,今回の経験から有効と考えられた.今後,極低出生体重児,超低出生体重児における安全性については長期予後も含めて検討していく必要があるが,短期的な副作用は認められず,特に緊急手術が不可能な施設においては待機中の全身状態の改善をはかる救命処置として有効な治療法であると思われる. |
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