P-I-70
肺動脈閉鎖にdry lung syndromeを合併した極低出生体重児に対するNO吸入療法の使用経験
旭川厚生病院小児科1),旭川医科大学小児科2),旭川医科大学第一外科3)
鈴木 滋1),中村英記1),梶野真弓1),白井 勝1),丸山静男1),杉本昌也2),真鍋博美2),津田尚也2),梶野浩樹2),郷 一知3)

【緒言】羊水過少に伴うdry lung syndromeでは,新生児遷延性肺高血圧(以下,PPHN)を高率に合併し,NO吸入療法が救命に有効である.今回,心室中隔欠損・肺動脈閉鎖という動脈管依存性心疾患にdry lung syndromeを合併し,NO吸入療法が重度の低酸素血症改善に有効であった極低出生体重児の 1 例を経験したので報告する.【患者】在胎29週 6 日,1,402g,帝王切開で出生した女児.48日間の前期破水期間があり著明な羊水過少を認めた.APS5分 5 点のため人工呼吸管理下に生後 1 時間で当科に新生児搬送された.胸部X線上小さなベル型の肺を認め,心エコー検査で心室中隔欠損・肺動脈閉鎖と診断した.lipoPGE1持続点滴(10ng/kg/min),サーファクタント投与,HFO管理(MAP 16mmHg)によっても低酸素血症(PO2 17.5mmHg,AaDO2 611mmHg)の改善を認めず,生後 5 時間にNO吸入療法(10ppm)を開始した.酸素化は徐々に改善し,生後12時間でPaO2 33.8,AaDO2 431,生後39時間にはPaO2 47.7,AaDO2 175となり,生後42時間にNOを中止できた.生後41時間の胸部X線で肺はベル型でなくなり含気が良好になったことから,肺低形成ではなくdry lung syndromeと診断した.動脈管における左右短絡の流速はNO開始前0.54m/s,NO開始直後0.94,35時間後1.74と上昇し,肺動脈閉鎖においても心エコーによってPPHNの改善をモニタできた.患者はこの後,動脈管開存を維持するため,PGE1-CD製剤への変更や,それに伴う無呼吸により人工呼吸管理を必要とするなど治療に難渋したが,生後74日に無事右mBT shunt術を受け,順調に経過している.【まとめ】dry lung syndromeでは,肺の虚脱による低酸素血症が肺血管攣縮を来しPPHNになると考えられており,動脈管依存性肺循環を合併した患者の場合,さらに重度の低酸素血症を来す.本症例のようにNO吸入療法はその改善に有効であり,動脈管依存性肺循環を合併した患者の予後の改善につながった.

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