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新生児遷延性肺高血圧症を合併した大血管転位症の 3 例
北海道立小児総合保健センター循環器小児科1),北海道立小児総合保健センター心臓血管外科2),市立釧路総合病院小児科3)
長谷山圭司1),横沢正人1),菊地誠哉2),東館義仁3)

新生児遷延性肺高血圧(PPHN)を合併した大血管転位症(TGA)の 3 例を経験したので報告する.【症例】症例 1 はd-TGA(I),PFO,PDA.新生児仮死,胎便吸引症候群によるPPHN,肺出血を合併し,一酸化窒素(NO)吸入療法を含む種々の治療を行うも反応なく生後16時間で死亡した.症例 2 はd-TGA(I),PFO,PDA.生直後より呼吸障害を認め,気管内挿管され当センターへ搬送された.呼吸器より離脱したところSpO2の低下があり,バルーン心房間裂開術(BAS)を施行するも改善しなかった.PPHNの合併を疑い,NO吸入療法を施行したところ急速にSpO2は改善し,呼吸器より離脱可能となり,日齢 9 に一期的Jatene手術を施行した.症例 3 はd-TGA(I),PFO,PDA.胎便吸引症候群によるPPHN,肺出血を合併し,搬入時はショック状態であった.NO吸入療法,サーファクタントによる気管内洗浄を施行.エコーガイド下でBAS(1.2ml)施行し,肺出血は改善した.その後PDAが縮小しlipo-PGE1を増量,さらにPGE1-CDに変更するも反応なく,一期的Jatene手術を断念し,再度BAS(2ml)を施行した.その後PGE1の効果が回復したが,減量するとPDAが縮小し,SpO2が不安定のため,Lt-modified BT shuntを施行した.術後PGE1を中止したが,逆にPDAは拡大し,肺血流が増加してプレショック状態となった.メフェナム酸を投与するも反応がなく,PDA ligationを施行した.その後は状態が安定し,5 カ月時にSenning手術を施行した.【考察】PPHNを合併したTGAにおいては,肺うっ血が病態に強く影響を与えていることが示唆され,NO吸入療法によるPPHNの治療に加え,病早期の積極的なBASによる心房間交通の拡大,適切なPDAの維持が必要である.

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