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Fontan術後例における心拍変動解析
横須賀共済病院小児科1),東京都立清瀬小児病院循環器科2),東京都立清瀬小児病院心臓血管外科3)
上田秀明1),大木寛生2),葭葉茂樹2),菅谷明則2),佐藤正昭2),加島一郎3),鈴木孝明3),福田豊紀3)

【目的】Fontan術後例における心拍変動解析の意義を明らかにすること.【背景】心拍変動解析は,心臓自律神経評価や心不全,冠動脈疾患などの予後の予測に有効である.Fontan術後例の心臓自律神経活動の低下が報告されている.一方で大内らは,Fontan術後例の心拍変動の低下は,手術操作による影響に加え,心室を介さない血行動態が寄与するところが大きいとしている.【対象】対象はFontan術後例でホルター心電図記録を行なった12例(APC 2 例,TCPC 9 例,心外導管使用例 1 例)(F群).ホルター心電図記録時年齢は5.7±2.5歳,術後年数は3.0±1.9年.対照はF群の年齢と有意差を認めないbiventricular repair術後12例(B群)と器質的心疾患を有さない12例(C群).【方法】retrospective study.フクダ電子社製RR間隔スペクトラム解析プログラムを用い,24時間Holter心電図記録のRR間隔データを解析した.total power(TP),LF(0.04~0.15Hz),HF(0.15~0.40Hz),LH/HFの周波数領域解析を行った.各群間の比較検討にKruskal-Wallis検定,Scheffe法を用いた.F,B群間で,手術時期,手術回数,心室造影時のEFを比較した.【結果】F群はC群のTF(557±586ms2 vs 2452±1234ms2,p = 0.0012),LF(142±198ms2 vs 849±440ms2,p < 0.0001),HF(86.3±117ms2 vs 476±304ms2,p = 0.0047),LF/HF(1.3±0.3 vs 2.3±1.3,p = 0.0014)に対し有意な低値を認めた.またF群はB群のTF(557±586ms2 vs 2,780±1,843ms2,p = 0.0006),LF(142±198ms2 vs 600±450ms2,p = 0.0197),HF(86.3±117ms2 vs 471±448ms2,p = 0.0124)に対し有意な低値を認めた.B,C群間で,いずれの項目に有意差を認めなかった.F群,B群間で手術時期,手術回数,心室造影時のEFに有意差を認めなかった.【結論】1)Fontan術後では心臓自律神経活動は著しく低下している.2)Fontan術後の心拍変動の低下の大部分は,Fontan術の術式,手術侵襲によらない.

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