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当科で経験した冠静脈洞型心房中隔欠損症の 3 例
県立岐阜病院小児循環器科1),県立岐阜病院小児心臓外科2)
桑原直樹1),後藤浩子1),安達真也1),滝口 信1),八島正文2),竹内敬昌2),桑原尚志1)

【背景】冠静脈洞型心房中隔欠損症は静脈洞型心房中隔欠損症の一つであり,比較的まれな先天性心疾患である.本疾患は冠静脈洞と左房の共通壁の一部または全部が欠損しており,術前診断が困難な症例も多い.今回,われわれは左上大静脈遺残を伴わない冠静脈洞型心房中隔欠損症の 3 例を経験したので報告する.【症例】症例 1 は 7 歳男児.症例 2 は10歳女児.症例 3 は 5 歳女児.症例 1,2 は学校検診にて心電図異常を指摘,症例 3 はVSD自然閉鎖後経過観察中,右室の容量負荷が続くため精査目的のため紹介となった.【診断】3 例とも超音波検査にて冠静脈洞の拡大,右室の容量負荷,冠静脈洞での左右短絡を確認し,冠静脈洞型心房中隔欠損症と診断した.心臓カテーテル検査は全例に施行された.左上大静脈遺残を含め,他の合併心疾患は認めなかった.肺静脈造影を 1 例,冠静脈洞での造影を 2 例に施行し,冠静脈洞が開口する直前の冠静脈洞に部分的欠損を生じたpartially unroofed terminal portion of coronary sinusと診断した.【外科治療】症例 1 はroofを作成した.症例 2 は冠静脈洞中間部に術前診断されていなかった欠損孔を認めたため冠静脈洞の閉鎖を行った.症例 3 は冠静脈洞の閉鎖を行った.全例直接閉鎖可能で,無輸血で終了した.症例 1 は術後上室性期外収縮の散発を,症例 2 は接合部調律が数日間続いたが,その後消失した.【結論】比較的まれな左上大静脈遺残を伴わない冠静脈洞型心房中隔欠損症の 3 例を経験した.心臓カテーテル検査を含めた画像診断で術前の検索を行ったが,1 例では,多発性の欠損孔を確認しえなかった.冠静脈洞型心房中隔欠損症は,術前診断が困難な症例もあり,術前診断に加え術中の検索も重要である.

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