P-I-119
Fabry病ヘテロ接合における心血管病変の検討
東京慈恵会医科大学小児科
藤原優子,寺野和宏,浦島 崇,布山裕一,安藤達也,大橋十也,衛藤義勝

【背景】Fabry病はα-galactosidase A欠損による糖脂質代謝異常症である.心血管病変を呈し,心不全・腎不全のため30~40歳代で死亡することが知られている.酵素補充療法前の心血管病変の把握は,重要な治療効果判定の指標となる.【目的】Fabry病ヘテロ接合(ヘテロ型)患者の心電図・心エコー検査所見を明らかにする.【対象】α-galactosidase Aの酵素活性を測定,あるいは家族歴より診断したヘテロ型Fabry病女性患者13例(8~67歳:平均38.8歳).腎機能障害を 1 例,心筋梗塞既往を 1 例に認める.【方法】年齢・心電図・心エコー所見を検討する.心室中隔(IVS)11mm,左室後壁13mm以上を心筋肥厚とした.【成績】1)心電図:心拍数は63.3±9.6分で,心房細動を 1 例,心室性期外収縮を 1 例に認めた.電気軸は全例正常であった.PR時間は143±28msec,QRS時間は75±23msec,QT時間389±38msec,QTc398±33msecであった.右室肥大所見は全例になく,4例に左室肥大を,6 例にST-T変化を認めた.2)心エコー検査:左室肥厚を 5 例(IVS 5 例,LVPW 2 例)に認めた.心エコー上,年齢とともに心筋が肥厚し,心筋肥厚例はいずれも50歳以上であった.6 例に三尖弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全を 7 例,大動脈弁閉鎖不全を 4 例に認めた.2 例に僧帽弁乳頭筋の左右不対象な肥大を,大動脈弁の変形を 4 例に認めたが,大動脈弁の石灰化は認めなかった.全例で左室駆出率は60%以上であった.LVDdは43.9±3.1mm,LVDsは28.9±3.2mmであった.【結論】Fabry病では,不整脈・徐脈の報告があるが,心房細動を 1 例に認めた.また,心筋症に伴うQT延長も認めなかった.心電図上は心筋肥厚を呈する症例で,左室肥大,陰性T波を認めた.古典的男性Fabry病患者と比し,進行が遅い.男性患者と同様に大動脈弁の変形が年齢とともに進行した.しかし狭窄・閉鎖不全の程度は軽度,心筋は均等に肥厚し,左室流出路狭窄も認めなかった.左室収縮能は維持されている.

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