B-II-5
カテコラミン誘発性多形性心室頻拍の長期管理について
日本大学医学部小児科1),名古屋大学医学部小児科2),日赤和歌山医療センター第二小児科3),国立循環器病センター小児科4),横浜市立病院小児科5)
住友直方1),原田研介1),長嶋正實2),安田東始哲2),中村好秀3),新垣義夫4),黒嵜健一4),柴田利満5),新村一郎5)

【目的】カテコラミン(CA)誘発性多形性心室頻拍(CPVT)は極めてまれな心室頻拍である.CPVTの実態を調査し治療,管理などを検討する目的で本研究を行った.【方法】多施設から集計した30症例(男13例,女17例,発症年齢10.3±6.1歳)を対象とした.【成績】発見動機は失神24例(80%),心停止 2 例(7%),家族歴 4 例(13%)であった.CPVTの心拍数は毎分192±30で,非持続性21例(70%),持続性 7 例(23%),心室細動 3 例(10%)であった.運動負荷で28例中28例(100%),CA静注で17例中13例(76%)にCPVTが誘発されたが,プログラム刺激(EPS)では19例中誘発例はなかった.加算平均心電図は11例で記録したが,LP陽性例はなかった.6.8±4.9年の経過観察で 7 例(23%)が突然死し,脳性麻痺を 2 例(7%)に認めた.25家系のうち 2 家系に家族歴を認め,常染色体優性遺伝(AD)が疑われた.治療はβ遮断薬単独投与が30例中21例(プロプラノロール17例,アテノロール 3 例,カルテオロール 1 例),ベラパミルとβ遮断薬が 4 例であった.メキシレチンの単独もしくは併用を行ったのは 3 例,ジソピラミドの併用は 1 例で,これら 4 例のうち 3 例が突然死した.β遮断薬からフレカイニドへ変更した 1 例は,頻回の失神を繰り返した.カテーテルアブレーションは 3 例に試みられたが,成功例はなかった.家族性の 3 例でベラパミルの静注を行い,CPVTの抑制効果を認めた.1 例には植え込み型除細動器(ICD)を植え込み,薬剤,運動制限とともに経過を監察している.【結論】CPVTは予後不良で,高率に心室細動を起こす.本症はEPSで誘発されず,LPが陰性で,運動およびCAで誘発されることより,CA感受性の自動能が機序として考えられる.今回ADのCPVTで,Ca拮抗薬がCPVTを抑制することがわかり,β遮断薬以外にCa拮抗薬も治療薬となりうる可能性が示された.CPVTの根治は困難で,ICD植え込みの適応と考えられる.

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