B-II-7
当院における頻拍誘発性心筋症
静岡県立こども病院循環器科1),日赤和歌山医療センター第二小児科2)
石川貴充1),青山愛子1),大崎真樹1),満下紀恵1),金 成海1),田中靖彦1),中村好秀2),豊原啓子2)

【はじめに】頻拍誘発性心筋症は,頻拍性不整脈に起因する可逆性の心室機能障害であり,近年小児例の報告も散見される.当院での経験につき報告する.【症例 1】7 歳男児.診断:潜在性WPW症候群.経過:気分不快,嘔吐が約 1 週間持続し,当科入院.HR 200bpm,CTR 65%,LVEF 26%.入院直後に心停止し,蘇生後もincessant型のlong RP頻拍のほか心室頻拍,心室細動が頻発.ICU管理下で直流除細動と心房ペーシングにて対処後,flecainide投与.21日後LVEFは70%に改善.退院後,高周波カテーテルアブレーション(CA)が施行された.【症例 2】18歳女性.診断:心房粗動,心房細動.経過:両側膝蓋骨脱臼にて当院整形外科入院中に頻拍出現.51日目に心原性ショックとなり心停止に至りICU管理となる.CTR 64%,LVEF 28%.propafenone,propranolol,digoxinの併用にて心室機能の改善を認めた【症例 3】日齢28女児.診断:潜在性WPW症候群.経過:日齢25より哺乳力低下,日齢28心原性ショックにて近医入院,蘇生後当科搬送となる.HR 300bpm,CTR 66%,LVEF 43%.ATPにて洞調律に復帰,disopyramideにて,6 日間でLVEF 74%に改善.【症例 4】4 カ月男児.経過:心臓腫瘍の外来経過観察中に不整脈指摘(1 カ月前の受診時には不整脈認めず).Holter心電図にて上室性頻拍のほか心房性期外収縮,心室頻拍が混在.HR 53~250bpmと変動あり.CTR 63%,LVEF 30%.disopyramide内服を行い,外来管理下で 6 カ月後LVEF 62%に改善.【結語】原因の明らかでない心室機能障害の診断に際しては,本症の存在を常に念頭に置く必要がある.今回の検討では,HRが持続して200bpmを超える症例は,いずれも心室機能障害が顕著であり,循環不全を呈していた.3 例が薬物療法のみで軽快したが,難治性の場合はCAを選択する必要があると思われた.

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