C-II-27
先天性横隔膜ヘルニアにおける肺血流の評価
群馬県立小児医療センター循環器科1),群馬県立小児医療センター外科2)
篠原 真1),小林 徹1),小林富男1),鈴木則夫2)

【はじめに】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は,NO,ECMOの使用により救命率は上昇したといわれるが,いまだ術前術後の管理に難渋する重篤な疾患である.循環動態や肺機能の指標として,心エコーによる動脈管の評価や心機能の評価,血液ガス分析によるAaDpO2,a/ApO2などが用いられてきたが,肺血流に関しての検討は十分ではない.そこで,パルスドプラ法を用い,肺血流の評価を試みたので報告する.【対象と方法】対象は1999年 9 月から2003年 1 月までに当院に入院した左CDH 9 例で,controlは呼吸循環障害のない新生児 5 例とした.パルスドプラ法にてMPA,r-PA,l-PAにサンプリングポイントを置き,それぞれでATI,STIおよびPEP/AT(STI/ATI)を計算し,経時的変化を観察した.呼吸管理下においては,AaDpO2,a/ApO2との相関を検討した.【結果】正常新生児は 3 ポイントでの差はなく,ATI,STIともに10日前後で肺高血圧のパターンから改善した.CDH例は,生存例 7 例,死亡例 2 例であった.肺血流は有意に左右差を認め,死亡例のうち 1 例はl-PAの血流を検出できなかった.MPA,r-PA,l-PAの血流パターンはいずれもAaDpO2,a/ApO2との相関を認めたが,PEP/ATとの相関が最も良好であった.生存例では術前術後でPAの血流は左右とも改善がみられたが,死亡例では左のみならず,右でも血流の悪化がみられた.また,生存例では退院時においても肺血流パターンの左右差が残存していた.【結語】1)パルスドプラ法による左右PAの血流評価はCDH例の患側肺だけでなく健側肺の成熟度の予想,肺血管抵抗の把握に有用な方法であると考えられた.2)PEP/ATが,AaDpO2,a/ApO2と強い相関を認め,簡便な指標になりうると思われた.

閉じる