D-II-19
右冠尖逸脱を伴う周膜様部心室中隔欠損における無冠尖逸脱の合併
市立室蘭総合病院小児科1),国立循環器病センター小児科2),国立循環器病センター心臓血管外科3)
富田 英1),黒嵜健一2),畠山欣也2),山田 修2),八木原俊克3),越後茂之2)

【背景】近年,周膜様部心室中隔欠損(pVSD)にも高頻度に右冠尖逸脱(RCCH)を伴うことが報告されているが,予後やその規定因子については十分検討されてはいない.【目的】RCCHを伴うpVSDにおける無冠尖逸脱(NCCH)合併の意義を検討すること.【対象と方法】国立循環器病センターにて,10歳以下からドプラエコーにて経過を観察したRCCHを合併するpVSD 102例を対象とし,大動脈弁変形の程度,NCCHや大動脈弁逆流(AR)の有無,およびその予後について検討した.初診時年齢は10カ月,最終受診時または手術時の年齢は15歳,RCCH診断年齢は 9 歳(いずれも中央値)であった.大動脈弁変形の程度としては左室長軸断面収縮期における右冠尖の変形部位の径を大動脈弁輪径で除したRCCDと,拡張末期における短軸像で右および無冠尖の底辺の長さを,左冠尖の底辺の長さで除したR/L,N/Lを用いた.【結果】ARを認めた群は認めない群に比し,RCCD,N/Lが有意に大であったが(p < 0.01),R/Lには有意差を認めなかった.20例でNCCHを合併した.102例のうち,NCCHを合併しない82例では20例で,NCCHを合併した20例では18例でARを認めた(p < 0.01).NCCHを合併せずにARを認めた20例のARはすべて軽度であった.NCCHを合併し,ARを認めた18例中 3 例が中等度以上のARであった.NCCHを認めた20例中12例に外科治療を行った.手術時にARを認めた11例中 5 例では大動脈弁形成術を行い,このうち 1 例は弁置換となった.【考察と結語】RCCHを伴うpVSDにおけるNCCHの合併は,右冠尖の変形の程度によらず,ARへの進行を示唆する所見と考えられる.右冠尖と無冠尖の逸脱にARを合併した場合は,高率に大動脈弁形成術を要するため,これら二尖の逸脱所見の早期発見が重要である.

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