【目的】異常な肺静脈還流を伴った三心房心を 2 例経験したので報告する．【症例 1】心エコーで三心房心と診断．57生日（2.4kg）に根治術施行．ASDは真左房と交通しており真左房には副心房との交通孔を有する膜様異常隔壁があった．また副心房後壁には冠静脈洞とつながる肺静脈還流路を認めた．手術はASDを拡大し左房内異常隔壁を切除．Darling分類IIA型TAPVRの根治術に準じて，冠静脈洞をcut backし自己心膜で心房中隔を形成して肺静脈還流路を確立した．【症例 2】生後 3 日（2.0kg），Darling分類III型TAPVRとの術前エコー診断で緊急手術に臨んだが，左房と総肺静脈には小さな交通路が存在していた．左心耳基部からこの交通路を経由して共通肺静脈まで切開したところ左房内に異常隔壁を認め，三心房心を合併していることが判明．真左房には小さなASDを，真左房と副心房の間には小さな交通孔を認め，副心房が共通肺静脈と接合していた．手術は可及的に異常隔壁を切除し共通肺静脈接合部を拡大，共通肺静脈と左房切開を吻合した．【考察】三心房心のLucas-Schmidt分類においては，副心房から真左房以外への異常還流路（ASDを除く）を伴ったものはIB2型またはIIB型に分類される．症例 1 は副心房から冠状静脈洞への肺静脈還流路を合併しており，IB2型に分類される三心房心であった．症例 2 においては，隔壁によって真左房と隔てられた副心房とは別に，共通肺静脈がchamberを形成しており，副心房と共通肺静脈との間には細い交通路が存在していた．また共通肺静脈からは垂直静脈を介した異常肺静脈還流を伴っていた．副心房に肺静脈が直接接合していないこのような形態はLucas-Schmidt分類の範疇には入らず，TAPVRを伴った三心房心というべきものであると考えられた．また本症例における左房内異常隔壁は，共通肺静脈が左房に取り込まれる際に遺残した組織が隔壁を形成するという機序では説明できないものであった．