P-II-44
Intact ventricular septum(IVS)で左室流出路狭窄(LVOTS)を伴う完全大血管転位症(IV型TGA)に対する外科治療成績
東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所小児心臓血管外科
三浦 崇,黒澤博身,新岡俊治,長津正芳,磯松幸尚,森島重弘,坂本貴彦,岩田祐輔

【背景】IVSでLVOTSを伴うIV型TGAに対する術式はLVOTSの部位・程度により心房内血流転換術(ATS)かJatene手術(ASO)かに決定される.当院では弁性狭窄例はATS,弁下狭窄例はASOを基本方針としてきた.今回IV型TGAの遠隔成績について検討した.【対象】対象は1980年 1 月~2002年12月まで根治術を施行した左室-肺動脈間に30mmHg以上の圧較差を有するIV型TGA 9 症例(男 6,女 3).手術時年齢1.3(13日~5.3歳)歳,体重6.9(3.5~17)kg.先行手術はBAS 9 例,L-original BTS 3 例,LMBTS 3 例で,Potts' shunt,PABを各 1 例施行した.合併奇形はPDA 2 例,aberrant RSCA,cleft MVが各 1 例であった.2 例にsmall LV(LVEDV 53%,70% of N),3 例にTR I°を認めた.LVOTSは弁性狭窄と二尖弁弁性狭窄を各 4 例,弁性狭窄 + 弁下狭窄を 1 例認めた.術式はSenning手術 7 例(弁下 4 例,弁性 3 例),Fontan + DKS + TV弁輪形成術 1 例(LVEDV 53% of N),truncal switch + RVOTR(自己心膜 1 弁付き導管)1 例であった.弁下狭窄例のASO非施行理由は異常筋束切除後の形態的狭小左室流出路 2 例,肺動脈弁尖肥厚 1 例,small LV(LVEDV 70% of N)+ cleft MV 1 例であった.【結果】急性期死亡なく,遠隔期死亡はtruncal switchの 1 例で術後1.5年目に心不全と肺炎の合併で失った.生存 8 例の追跡期間は11.1(1.7~18.4)年で,NYHA I度 6 例,III度 2 例(右心不全,moderate TR)であった.手術前後でLVOT圧較差は51±16→7.2±8.6mmHg(術後平均3.2年,paired-t p < 0.01),CTRは60±7→55±6%(術後平均7.9年,paired-t p < 0.05)と改善し,術後C.I.は3.6±1.0l/min/m2と良好であった.遠隔期合併症としてSVC閉塞を 1 例に認めた.術後UCGによるTRの程度はmoderate 4 例で,心房性不整脈は術後14年目に生じたAFの 1 例であった.8 例中 5 例がmedication freeの状態である.【結語】比較的良好な遠隔像であったが,ATS後はTR・心房性不整脈・右心不全の可能性があるため,厳重な経過観察が必要である.

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