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高度気管狭窄,右鎖骨下動脈起始異常,右肺動脈起始異常を合併した大動脈縮窄症の 1 例
静岡県立こども病院心臓血管外科1),静岡県立こども病院循環器科2),兵庫県立こども病院小児外科3)
関根裕司1),坂本喜三郎1),西岡雅彦1),藤本欣史1),太田教隆1),村田眞哉1),中田朋宏1),横田通夫1),青山愛子2),佐藤志以樹3)

【目的】高度気管狭窄,右鎖骨下動脈起始異常,低形成を伴なった右肺動脈起始異常を合併した,治療方針の難しい大動脈縮窄症を経験したので報告する.【症例】生後70日,2,700gの男児.出生時より気管狭窄(長さ30mm,径 1~2mmのlong segment)を認め,呼吸管理に難渋した.生後14日に気管支ファイバー下気管バルーン拡大術を施行し2.0mm径挿管チューブを挿入でき,心血管系手術が可能となった.【手術】診断は大動脈縮窄症(CoA),rt CCAからrt PDAを経由して起始する右肺動脈起始異常(AORPA),右鎖骨下動脈起始異常(AORSCA)で,径はおのおのrt PDA 2.9mm,rt PA 4.2mm,lt PDA 5.5mm,lt PA 3.1mm,isthmus 2.1mmであった.生後20日,2,200gで縮窄解除術,rt PA再建術を施行.rt SCAはlt SCAのdistal側,isthmusのproximal側より起始して右後方へ走行しており,気管,食道を後方から圧迫していた.arch再建は,arch内側にrt PA再建のspaceを確保し,また気管に対する圧迫を防ぐために,isthmusを切断し,archを延長する目的で 6mmの人工血管によるinterposeを行った.rt PAは自己組織で再建することを目的にPDA組織を僅かに残してmPAに直接端側吻合した.【術後経過】早期はPA血流に左右差はなく良好であったが,術後10日目ごろからrPA狭窄が疑われるようになり,術後40日目の心カテにてrt PAの完全閉塞を確認し再手術となった.rt PA閉塞の原因としては遺残PDA組織による狭窄とasAoによる圧迫が疑われ,両者に対応するため,狭窄・閉鎖部切除 + 外科的再建ではなく術中ステント(再拡大可能)を選択した.術後心echoにてbil PAの血流に問題なく経過は良好である.【結論】archとrPAの両再建方法の判断が難しい症例を経験した.特にrt PAは自己組織による端側吻合後に閉塞し,自己PA組織の連続性を維持できる術中ステントを選択した.慎重な経過観察が必須だが,こうした症例での新しい選択肢の一つと考えている.

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