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左房うっ血を伴わないlevoatriocardinal vein(先天性体静脈-肺静脈側副路)とconotruncal anomalyの関連性─Neural crest cellsは体静脈形成に関与する─
日赤医療センター心臓外科1),日赤医療センター新生児科2),日赤医療センター小児科3)
金子幸裕1),柳生邦良1),与田仁志2),土屋恵司3)

左上肺静脈と左腕頭静脈をつなぐlevoatriocardinal vein(先天性体静脈肺静脈側副路)を伴う動脈幹症の新生児例を経験した.患児には生後 9 日に根治術を施行したが,術後 7 日に呼吸不全で死亡した.levoatriocardinal veinは,胎児期のsplanchnic plexusの遺残によって起こるとされている.本例を含めこれまで報告されたlevoatriocardinal vein 33例のうち25例は僧帽弁や心房間交通の狭窄 / 閉塞のため左房からの血液流出障害があり,胎生期の左房うっ血の逃げ道としてsplanchnic plexusが開存,遺残したと考えられる.本例を含め残り 8 例は,左房からの血液の流出路が十分あり,胎生期の血行動態上splanchnic plexusが遺残する理由はない.この 8 例のうち 4 例にはconotruncal anomaliesが合併していた.文献上neural crest cellsはconotruncusやarterial trunk以外にanterior cardinal veinに分布すること(Bergwerff M et.al., Circ Res 82: 221),conotruncal anomaliesは左上大静脈遺残を高率に合併するが肺静脈還流異常との合併はまれであること,conotruncal anomalyを誘発するneural crest cell ablation動物モデルには肺静脈還流異常を生じないこと(Phillips MT, et.al., Anat Rec 223: 292)が知られている.本研究により,左房うっ血を伴わないlevoatriocardinal veinはconotruncal anomalyと関連があり,neural crest cellは胎生期の体静脈の形成に関与するが肺静脈の形成には関与しないことが,ヒトで示唆された.

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