P-II-86
肺動脈血管壁におけるインテグリンαサブユニットの発現分布について
大阪大学大学院医学系研究科小児発達医学講座小児科1),Institute of Child Health2)
小垣滋豊1),Sheila G. Haworth2)

【緒言】インテグリンは細胞膜受容体の一つであり,αおよびβサブユニットのヘテロダイマーで構成され種々の細胞外マトリックスの受容体として細胞内外の情報伝達に中心的な役割を果たしている.われわれは肺動脈血管壁を構成する細胞外マトリックスの発現が生理的・病的に変化することを報告してきたが,その細胞側の受容体の変化についてはいまだほとんど解析されていない.【目的】正常肺動脈血管壁におけるインテグリンαサブユニット(α1~α6)の蛋白発現を調べその空間的分布を明らかにする.【方法】豚胎仔肺(左肺下葉中央部)の凍結組織標本を用い,α1~α6サブユニットに対するモノクローナル抗体(Chemicon社)を使用して免疫組織化学染色を行った.少なくとも 3 匹以上の動物から採取した肺を用い,同一切片上に弾性肺動脈(EPA)から筋性肺小動脈(SMPA)まで含む標本を用いた.【結果】α1:EPAからSMPAに至るすべてのレベルの肺動脈で中膜平滑筋細胞が染色陽性.α2:今回の用いた抗体では有意な染色は得られなかった.α3:EPAからSMPAまでの中膜平滑筋細胞が染色陽性.α4:EPAから筋性肺動脈(MPA)までの中膜最外層の細胞が染色陽性.α5:主にMPAの中膜平滑筋細胞が染色陽性.α6:SMPAの内皮細胞が染色陽性.【まとめ】インテグリンα1/α3/α5は主として中膜平滑筋細胞に,α4は中膜最外層の細胞に,α6は内皮細胞に分布していると考えられた.また肺動脈血管のレベルにより発現しているαサブユニットの種類が違う可能性も示された.肺動脈系において,細胞外マトリックスの受容体であるインテグリンの空間分布に差異が存在することは興味深く,今後発達における発現変化や細胞-細胞外マトリックス機能との関連について追究する必要がある.

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