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チアノーゼ性先天性心疾患に気管(気管支)軟化症を合併した 4 例の検討
山形大学医学部小児科
仁木敬夫,鈴木 浩,田辺さおり,早坂 清

チアノーゼ性先天性心疾患に気管(気管支)軟化症を合併することはまれであり,その診断と治療には難渋することが多い.1990年から当科で経験した 4 例を臨床的に検討した.症例 1)PPA.類洞交通.1 カ月時に右BT短絡術,2 カ月時に左BT短絡術を施行した.このころから喘鳴が出現し左無気肺を反復した.左肺動脈の圧迫に伴う左気管支軟化症と診断し,大動脈つり上げ術を施行したが手術死亡した.症例 2)TOF,PLSVC,MS,食道閉鎖,GER.日齢11に食道閉鎖に対する手術を施行した.術後からdying spellが出現した.拡張した食道と大動脈弓の圧迫に伴う気管(気管支)軟化症と診断し,3 カ月時に右BT短絡術と大動脈つり上げ術を施行したところ,dying spellは消失した.喘鳴や反復性気道感染がみられたがしだいに改善した.9 カ月時に左BT短絡術を追加し,2 歳 6 カ月時に両側両方向性グレン手術を施行した.症例 3)PPA,GER.日齢20の左BT短絡術施行後から喘鳴を認め,大動脈弓,左肺動脈の圧迫に伴う気管気管支軟化症と診断した.3 カ月時にBlalock-Hanlonを施行したが効果不十分だった.7 カ月時から人工換気を要したため,ASD作成術,肺動脈つり上げ術と肺動脈縫縮術を施行したが呼吸器から離脱できなかった.1 歳時に気管切開を施行し,3 歳時に呼吸器から離脱できた.症例 4)SRV,PA,RAA,lt. PDA.1 カ月時に右BT短絡術を施行した.2 カ月時から,dying spellが出現し,右側大動脈弓に伴う気管軟化症と診断した.1 歳過ぎにFontan手術および大動脈つり上げ術を予定している.チアノーゼ性心疾患児で喘鳴や呼吸困難が認められた場合には気管(気管支)軟化症の合併を考慮し,血管による気道圧迫の有無を検討する必要がある.大動脈弓部での圧迫に対し,大動脈つり上げ術が有用と考えられた.

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