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P-II-107 |
先天性心疾患の術前術後の心不全に対するピモベンダンの効果について |
東京大学医学部小児科1),東京大学医学部心臓外科2)
杉村洋子1),戸田雅久1),中村嘉宏1),渋谷和彦1),賀藤 均1),村上 新2) |
ピモベンダンは成人の心不全患者の運動能力および,少量投与により長期予後が改善するという報告がなされているカルシウム感受性増強剤である.今回私たちは,先天性心疾患に抗心不全薬としてこれを使用し,好感触を得たのでこれを報告する.対象は当院でフォローしている先天性心疾患患者のうち,7 カ月~46歳までの計 6 名.男女比は 4 対 2 である.疾患の内訳は,多脾症 1 例,三尖弁閉鎖症 1 例,先天性大動脈弁狭窄 1 例,不完全心内膜床欠損症 1 例,ファロー四徴症,肺動脈閉鎖,主要体肺動脈側副血行路 1 例,修正大血管転位症 1 例.術前に使用した多脾症の 1 例は共通房室弁逆流が高度であったために心不全が強く,利尿剤にジギタリス製剤に加えてACE阻害剤,さらにピモベンダンを加え,運動能力の改善をみた.三尖弁閉鎖の症例はTCPCの術後に胸水貯留が数カ月続き,内服薬としてACE阻害剤のほかにピモベンダンを加えたところ,胸水貯留が改善し,術後 5 カ月後のカテーテルでは,術前のEFが40%やっとだった症例が55%へと改善をみせた.先天性大動脈弁狭窄症例では,Konno手術後,不完全心内膜床欠損症では根治術後に残存した僧帽弁逆流による心不全に対して同薬剤を使用し,胸部レントゲン写真上,心胸郭比および全身状態の改善をみた.ファロー四徴症,肺動脈閉鎖,主要体肺動脈側副血行路の症例では,ドーパミンの離脱目的で,ピモベンダンを使用し,効果を得た.修正大血管転位の症例ではNYHA IVであった全身状態がIもしくはIIと改善し,胸部レントゲン写真にて心胸郭比の著明な改善を得た.46歳の症例を除いた小児の症例では,いずれの投与量も,成人の初期投与量 1 回量の体重換算の約半量を 1 日分(0.01~0.02mg/kg)として開始した.以上より,ピモベンダンの少量投与は小児複雑心奇形術前術後の抗心不全薬として,有効である可能性が高い. |
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