A-III-10
単純性大動脈縮窄症(simple CoA)に対する外科治療─術前左室機能低下例に対する補助循環併用の有用性─
大阪府立母子保健総合医療センター心臓血管外科1),大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科2)
帆足孝也1),岸本英文1),川田博昭1),三浦拓也1),秦 雅寿1),中島 徹2),萱谷 太2),稲村 昇2),石井 円2),角由紀子2)

Simple CoAは生後早期に心不全を呈する場合を除き自他覚症状に乏しく,そのため発見時には左室機能低下を認める症例が存在する.これらの症例では外科治療時の大動脈単純遮断による左室後負荷の急激な増大が過大侵襲となる可能性がある.【目的】術前左室機能低下を認めるsimple CoAに対する外科治療法を検討する.【対象】1993年から2002年までの10年間に当院にて手術を施行した,新生児・乳児期早期の単純性大動脈縮窄症 9 例(手術時日齢 2~68[中央値36]日,手術時体重1.9~4.6[3.5]kg,術前左室駆出率(LVEF)34~76[44]%).【手術】縮窄部位・範囲と大動脈弓の形態により,鎖骨下動脈flap(SCF)あるいは縮窄部切除・大動脈弓-下行大動脈直接吻合(EDA)を選択した.LVEF > 50%の 4 例(A群:62~76[67]%)および,2000年以前のLVEF < 50%の 3 例(B群:34~40[39]%)に対し後側方開胸,大動脈単純遮断にて手術(SCF 3 例,EDA + SCF 1 例,EDA 3 例)を施行した.2000年以降のLVEF < 50%の 2 例(左心不全が高度(左室収縮末期圧20,肺動脈圧79/30(50)mmHg)であった 1 例(症例 1)と,アシドーシス・無尿の改善がなく下半身循環の確立が急務であった 1 例(症例 2))(C群:34~44[39]%)に対し体外循環(CPB)を併用,胸骨正中切開下にEDAを施行した.【結果】死亡例はなかった.術後挿管期間は 1~5[2]日であった.術後カテコラミンはA群では使用されず,B群で[6]日間,C群で[7.5]日間使用された.A群では術後LVEFの増悪は認めず,LVEF > 60%まで回復するのに要した期間はB群で[41]日間,C群で[5]日間であった.特に症例 2 ではCPB開始直後より持続的に利尿を認めアシドーシスも改善し,腎機能は術後 7 日目で正常化した.【まとめ】左室機能が低下した単純性大動脈縮窄に対するCPB併用縮窄部切除術は全身循環の早期確立,大動脈弓単純遮断による左室後負荷増大の回避とともに,術後心機能の早期回復に有用であると考えられた.

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