S-II-4
左室流出路狭窄(LVOTO)を有する先天性心疾患に対する外科治療戦略
福岡市立こども病院心臓血管外科1),福岡市立こども病院循環器科2),福岡市立こども病院新生児循環器科3)
塩川祐一1),角 秀秋1),深江宏治1),田ノ上禎久1),帯刀英樹1),佐川浩一2),牛ノ濱大也2),石川司朗2),福重淳一郎2),總崎直樹3)

【目的】LVOTOを有する先天性心疾患に対する両心室修復術の外科治療戦略に検討を加える.【対象】弓部異常(AA)を伴うVSD 183例,DORV 143例,TGA 293例,AVSD 247例のうち,AA + VSD 18例(9.8%),DORV 17例(11.9%),TGA 2 例(0.7%),AVSD 4 例(1.6%)に対し根治術時同時LVOT拡大(R)を行った.術式は,AA + VSDではdiscrete型弁下狭窄解除 5 例,outlet septum(OS)切除 4 例,valvotomy 4 例,安井法 5 例,DORVでは,primary interventricular foramen(P-IVF)拡大 8 例,secondary interventricular foramen(S-IVF)拡大 7 例,副房室弁切除 1 例,TGAではS-IVF拡大 4 例,副房室弁切除 2 例,ECDでは異常弁組織切除 4 例であった.また根治術後に初めてLVOTRを行ったのは,AA + VSD 10例,DORV 15例,TGA 2 例,AVSD 8 例であった.balloon拡大後のcritical AS 1 例に対して乳児期Ross-Konno手術を行い結果は良好であった.基本的な外科治療戦略は,弓部異常(AA)を伴うVSD:左室流出路径が 3mm以上は放置,3mm未満で安井法を行う.DOR V,TGA:P-IVF,S-IVFを可及的に拡大する.【結果】LVOTR術後の早期死亡 4 例(6.3%),遠隔死亡 4 例(6.7%),10年生存率89%であった.根治術後にLVOTRの対象となった症例の形態は,AA + VSDではOSによる狭窄 2 例,discrete型 3 例,弁性 5 例であった.DORVではP-IVFの狭窄(10/15例)が,DORV,TGAに対する心内修復ではtunnel patch内組織増生によるLVOTOが多かった(7/17例).AVSDでは内在性のLVOTが問題となった(5/8 例).10年後の再LVOTR回避率は全体で50%,根治術LVOTR群51%,再手術LVOTR群47%,疾患別では,AA + VSD 63%,DORV 33%,TGA 72%,ECD 47%であった.【結語】1)AA + VSDにおいてLVOT径が 3mm以上で放置,以下で安井法を選択する戦略によって良好な結果を得た.2)balloon拡大術後のcritical ASに対するRoss-Konno手術は有用である.3)DORV,TGA,ECDではそれぞれの疾患の形態的特徴をふまえた治療戦略が重要である.

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