B-III-6
皮下トンネル型中心静脈カテーテルを用いた長期Flolan療法の管理と有害事象
東邦大学医学部第一小児科
中山智孝,中村久理子,高月晋一,星田 宏,松裏裕行,佐地 勉

【背景】原発性肺高血圧症に対するFlolan療法の中心静脈ラインにBroviacカテーテル(Brカテ)が用いられることが多い.通常,治療期間は 1 年以上に及ぶためカテーテル留置は必然と長期になるが,カテーテル関連事象に関する報告は少ない.【対象および方法】1997年 3 月以降,Flolan療法のためBrカテを留置した重症肺高血圧症36例,留置時年齢 3 カ月~37歳(中央値12.5歳)を対象とした.Flolan注入の中断またはその危険が考えられたためBrカテの交換 / 修復を要した事象について後方視的に検討した.【結果】初期の 3 例を除く33例は当院でBrカテを留置した.感染や抜去を予防するため十分な皮下トンネル長を設けるよう配慮し,体外に出た部分の固定法,消毒・ドレッシング交換等の手技を患者家族に十分な指導を行った.原則として全例にワーファリンを投与した.観察期間(最短 / 最長 / 平均±SD)はそれぞれ69/2,159/704±535日で交換 / 修復は 7 例(9 件)で発生した.内訳は抜去(含,未遂*):4 件(5 歳:23日目と855日目,8 歳*:338日目,20歳*:77日目),皮下トンネル部感染:2 件(8 歳:730日目,13歳:560日目),閉塞:1 件(12歳:口径の小さい4.2Fr,1,222日目に6.6Frへ入れ換え),カテーテル損傷:2 件(8 歳:689日目,8 歳:367日目)をリペアーキットで修復.累積カテーテル関連事象回避率は 1 年:91%,2 年:80%,3 年:73%であった.13歳以上 / 未満の 2 群間で事象発生件数に有意差はなかったが,13歳以上の年長者16例中 2 例(2 件)に対し13歳未満20例中 5 例(7 件)と年少者に多い傾向を認めた.経過中に死亡 5 例と生体肺移植 2 例を経験したが,重篤なカテーテル関連事象は発生しておらず29例は現在もFlolan療法継続中である.【結論】年少児ではより厳重な管理を要するが,Brカテの耐久性およびカテーテル関連事象の回避率はおおむね満足がいくものであった.

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