C-I-25
運動負荷における肺動脈圧変化
秋田大学医学部小児科
原田健二,田村真通,豊野学朋

【目的】成人での侵襲的手法による研究によれば,運動負荷中の肺動脈圧増加は約20mmHgであり,その肺動脈圧増加のメカニズムは約14mmHgの左房圧上昇によるとされている.このように運動負荷中の肺動脈圧変化は左房圧変化と密接な関係があり,運動負荷中の肺動脈圧計測は臨床的意義がある.しかしながら小児での運動負荷に伴う肺動脈圧変化に関する知見は乏しい.本研究は心エコーを用いて運動負荷中における肺動脈圧変化を検討した.【方法】対象は学校心電図検診で不整脈を指摘された基礎疾患のない正常小児15例(10±3 歳)と軽度左室駆出率低下(> 50%)を有す 2 例(11,12歳).坐位型エルゴメータを用いてランプ負荷により 1 分間に10ワットずつ増加させ,自覚的最大運動時まで負荷した.超音波心エコー装置はAloka SSD-6500を用いた.連続波ドプラ法を用いて運動前および自覚的最大運動負荷時における三尖弁逆流速度(V)を計測した.肺動脈圧はBernoulli equationから4V2として計測し,運動負荷前と運動中の肺動脈圧変化を算出した.【成績】正常小児では運動負荷により全例肺動脈圧は増加し,肺動脈圧増加は11±2mmHg(p < 0.001)であった.心筋障害を有す 2 例での肺動脈圧増加は17±1mmHgと正常に比し高い傾向にあった.運動負荷による心拍数増加は正常小児,軽度左室駆出率低下患者でそれぞれ75±9 から143±15(/分),81±3 から140±6(/分)と同程度であった.【結論】本研究では正常小児における運動負荷は肺動脈圧を11mmHg増加させる.正常小児に比し,左室心筋障害例での肺動脈圧増加は大きく,その理由は左房圧の上昇が大きいためと推測される.心エコー法と運動負荷試験から得られる肺動脈圧変化の計測は先天性・後天性心疾患における運動中の左室機能適応障害・左房圧変化の評価法として期待できる.

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