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C-I-27 |
小児期心疾患における心筋傷害マーカの臨床的意義―心臓型脂肪酸結合蛋白,ミオグロビン,トロポニンTによる検討― |
弘前大学医学部小児科1),弘前大学医学部保健学科2)
高橋 徹1),佐藤 工1),江渡修司1),上田知実1),佐藤 啓1),米坂 勧2) |
【緒言】心筋細胞質に存在する心臓型脂肪酸結合蛋白(HFABP)や筋原線維に存在するトロポニンT(TnT)は虚血などの心筋傷害により血中に逸脱し,心筋虚血の早期診断,予後判定に利用されている.虚血以外に成人心不全患者ではこれら心筋傷害マーカ血中濃度が上昇し,持続的な高値は予後不良因子とされる.小児期各種心疾患において血中の心筋傷害マーカを測定し,その臨床的意義について検討した.【対象および方法】生後 2 カ月から18歳の25例,男14例,女11例.先天性心疾患15例,川崎病冠動脈障害 7 例,心筋疾患 2 例,不整脈 1 例,うち心不全合併例 9 例.心筋虚血,腎機能障害例は除外した.血清HFABP,TnT,ミオグロビン(Mb),CK,CK-MB濃度,血漿心房性および脳性ナトリウム利尿ペプチド(ANP,BNP)濃度を測定.HFABPの評価に際して骨格筋由来の影響を鑑別するため,Mb濃度で除したHFABP/Mb(F/M)を用いた.【結果】CK-MBは心不全例で非心不全例に比べ高値を示したが(21.0±7.4 vs 14.5±6.6U/l,p = 0.04),ANP,BNPとの相関は認めず.TnT,HFABP,Mbは単独では心不全の有無や疾患による差を認めず.F/Mは心不全例で非心不全例に比べ有意に高値を示し(0.13±0.15 vs 0.04±0.02,p = 0.03),ANP,BNP濃度と有意な正の相関を認めた(おのおのr = 0.49・p = 0.02,r = 0.81・p < 0.0001).【考察】HFABPとMbはおのおの15kD,18kDとほぼ同一の分子量をもつ可溶性低分子蛋白で,傷害された組織から速やかに血中に放出される.HFABPは心筋,Mbは骨格筋に豊富に存在するという組織特異性があり,両者の血中濃度の比は傷害された細胞内の両者の比率を反映し,心筋傷害ではHFABP,骨格筋傷害ではMbが高率になる.心不全例で血中HFABPの比率が高く,潜在的な心筋傷害の存在が示唆され,F/MはANP,BNP濃度と相関したことから心負荷が強いほど心筋傷害は増すと推察された.小児例でも心筋傷害の指標としてHFABP,特にF/M比を用いた評価は有用と考えられた. |
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