D-I-20
国立小児病院・国立成育医療センターで経験した心筋炎13例の検討
国立成育医療センター循環器科1),国立成育医療センター手術集中治療部集中治療科2),国立成育医療センター心臓血管外科3)
三平 元1),百々秀心1),平田陽一郎1),豊田彰史1),山口佳世1),金子正英1),磯田貴義1),石澤 瞭1),松本 弘2),関口昭彦3)

【背景】心筋炎はさまざまな臨床経過をとり,鑑別診断として念頭においていない場合は,診断を見落とすこともある.診断された場合でも,病気の進行が速くかつ重症になる劇症型では治療に反応せず命を落とすことも少なくない.【目的】「的確な診断の難しさ」「治療と治療に対する反応性」の観点から,われわれが経験した小児心筋炎の症例を検討し,有効な診断および治療を考察する.【対象】国立小児病院・国立成育医療センターで1991年 5 月~2003年12月に経験した心筋炎13例12人(1人は再発).日齢 0~11歳 2 カ月.男児 6:女児 6.新生児 2 例,乳児 1 例,幼児 5 例,学童 5 例.【結果】<初発症状>腹部症状 8 例,発熱 8 例,呼吸器症状 5 例.聴診異常11例.<初回ECG>異常12例.1 例は未検査のまま死亡.<初回CTR>47~68%.<初回左室駆出率分画>13~70%.<初回CK>72~90,000IU/l.<治療>カテコラミンサポート11例.人工呼吸管理10例.抗不整脈薬投与 8 例.ガンマグロブリン使用 6 例.ECMO施行 4 例.ペーシングカテーテルによる緊急ペーシング 2 例.ステロイドパルス療法 1 例.<予後>12人中 4 人死亡.生存者 8 人のうち追跡可能者 6 人.退院後追跡期間は 1 カ月~1 年 5 カ月.左室駆出率分画低下 1 例,左室拡張末期径拡大 1 例,抗心不全薬内服 3 例.【考察】心筋炎の鑑別にあたり,「腹部症状・発熱」「聴診異常」「心電図異常」は重要であると考えられた.「心拡大の有無」は診断には有効ではなく,「CK」は経時的変化が重要であると考えられた.ガンマグロブリン使用例は全例生存しており,有効な治療と考えられた.ステロイドパルスは再発例に施行し,救命しえた.重症例には,緊急ペーシング,ECMOの迅速な施行が救命に有効であると考えられた.

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