E-I-2
PDE3阻害薬のラット動脈管拡張作用
東京女子医科大学循環器小児科1),神奈川県立こども医療センター周産期医療部新生児未熟児科2)
豊島勝昭1, 2),門間和夫1)

【目的】PDE3阻害薬の動脈管拡張作用を調べ,胎児,新生児期における臨床使用のための基礎的資料を得る.【胎仔動脈管に対する実験】妊娠19,21日(満期:21.5日)の親Wistarラットに,インドメサシン10mg/kgを経口投与するとともに,アムリノン,ミルリノンの0.1,1,10,100mg/kg,を腹腔内投与,ピモベンダンの0.01,0.1,1,2.5mg/kgを胃内注入した.4,8 時間後に帝王切開を施行し,娩出した胎仔を -80℃のドライアイス-アセトンに投入し全身急速凍結法で固定した.胸部をミクロトームで切り,ミクロメータ下に動脈管内径の計測をした[無投薬の動脈管内径は80(×10μm),インドメサシン単独投与の内径は20に収縮した].インドメサシンに加えてアムリノン 1,10,100mg/kgを投与した 4 時間後の胎仔動脈管内径は22,41,87,ミルリノン0.1,1,10mg/kgでは23,41,100,ピモベンダン0.01,0.1,1,2.5mg/kgでは23,26,32,66であり,投与量依存性に動脈管内径は拡張した.胎生21日では常用量の投与ではインドメサシン単独投与と比して有意な動脈管拡張効果はなかったが,胎生19日でアムリノンは 1mg/kgの投与の動脈管内径は47(対象37)で有意に動脈管の収縮を抑制した.【新生仔動脈管に対する実験】胎生21日に帝王切開にて娩出した新生仔ラットを環境温33℃で60分生存後にアムリノン,ミルリノンを腹腔内投与し,投与30分後に全身急速凍結法で固定し動脈管内径を計測した[動脈管内径は出生 0 分:80(×10μm),出生60分対照:8].アムリノン 1,10,100mg/kgを投与した新生仔では 8,20,80,ミルリノン0.1,1,10mg/kgでは19,47,84であり,投与量依存性に動脈管を拡張した.【結論】PDE3阻害薬は胎仔,新生仔ラットにおいて投与量依存性の動脈管拡張作用を有し,拡張効果は未熟児期が満期より強力であった.インドメサシンによる胎児動脈管早期収縮症の胎内治療薬になる可能性があるが,早産児への使用では症候性PDAを惹起する可能性がある.

閉じる