E-I-10
単心室疾患群における左室流出路(系統動脈)狭窄の外科治療
県立岐阜病院小児心臓外科1),県立岐阜病院小児循環器科2)
滝口 信1),竹内敬昌1),八島正文1),安達真也2),後藤浩子2),桑原直樹2),桑原尚志2)

【目的】小児の左室(体心室)流出路狭窄(LVOTS)にはさまざまな程度,形態が存在し,それによって治療方針も異なる.われわれはこれまでに単心室疾患(SV)群におけるLVOT拡大手術(LVOTR)症例を 6 例経験したので報告する.【対象】1997年 1 月から2003年 9 月までの 6 例.SV群の内訳は,TA(IIc),d-TGA低形成右室,total sinus defect型単心室,左室型単心室(SLV)(以上おのおの 1 例),DORV一側心室低形成(2 例),であった.【結果】先行手術はPABを 5 例,PAB後のフォンタン(F)型手術を 1 例に施行されていた.術前の心臓カテーテル検査(心カテ)ではLVOTの平均圧較差は16.3(0~82)mmHgであった.LVOTの形態は全例VSD(BVF)経由型であった.術後早期死亡なし,病院死亡 1 例(術後40日),遠隔期死亡なし.LVOTRはDamus-Kaye-Stansel(D-K-S)型手術を 4 例[全例グレン(G)手術時]に,BVF拡大術を 2 例(G手術時:1,F型手術後:1)に施行した.BVF拡大術を施行したうちの 1 例はd-TGA症例で,F型手術終了後より30mmHgの圧較差が認められ,術後 9 カ月の心カテでは圧差80mmHgであったため,術後10カ月で手術を施行した.D-K-S型手術施行例では,術後のLVOTSは認められていない.病院死亡はTA症例で,CoAを合併しており,EAAAとPAB施行 4 カ月後に心カテにて15mmHgの圧差を認め,G手術と同時にD-K-S型手術を施行されたが感染で失った.【考案と結語】SV群におけるLVOTR症例を 6 例経験した.全例で先行手術としてPABが施行されていた.SV群におけるVSD(BVF)経由型でのLVOT症例では将来的に心室間交通孔の狭小化を来すことがある.このような将来的にLVOTSを発症しうる症例では,変化するLVOTの形態を予測し,手術時に明らかな狭窄を認めなくとも積極的にLVOTRを施行すべきであり,可能な症例にはD-K-S型手術を行うのがよい,と考えられた.

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