P-I-A-1
妊婦集団における抗SS-A抗体陽性率と児の出生後心電図所見
筑波大学臨床医学系小児科1),筑波大学臨床医学系産婦人科2)
高橋実穂1),堀米仁志1),濱田洋実2),杉浦正俊1),村上 卓1),松井 陽1)

心奇形を伴わない先天性房室ブロックでは高率に母体抗SS-A抗体陽性であるにもかかわらず,陽性母体から房室ブロック児が出生する確率は 1~7.5%と少ない(Buyonら,2001).出生後にブロックが進行する例もあるが,出生後の心電図について経過追跡された報告は少ない.【対象と方法】2002年 1 月から2004年 1 月に当院産科を受診した妊婦全例(713名)の抗SS-A抗体をDID法またはELISA法でスクリーニングした.陽性者から出生した児について生後 1 週以内,1,3 カ月に心電図を施行し,一部の症例は 6,12カ月と追跡した.【結果】母体抗SS-A抗体陽性者は34/713名(4.7%)であった.無症候性が 7 名,PSL内服は 8 名でSLE(6),重症筋無力症(1),シェーグレン + ITP(1)が含まれた.経産婦では前児に房室ブロックの既往はなかった.抗SS-A抗体価はDID法で 4~254倍,ELISA法で7.5~500以上U/mlとばらつきがあった.256倍あるいは500U/ml以上と高値の症例(計 9 名)や抗SS-B抗体陽性例(4 名)も含まれた.現在までに出生した児26例中,房室ブロックは 1 例もなく,PQ間隔(msec)は99±14(1 週以内),102±14(1mo),103±10(3mo),90±2(6mo),105±7(12mo)であった.単発の上室期外収縮が 1 例,不完全右脚ブロックが 1 例認められた.生後 1 週以内のQTc > 440msecが 6 名(443~486msec)いたが(そのうち 4 名は抗SS-A抗体価500以上),月齢とともに正常化する傾向が認められた[Cimazら(2003)から同様の報告がある].【結論】抗SS-A抗体価高値は必ずしも児の房室ブロック発症のリスクにはならない.一方,出生後一過性にQT延長が認められる症例があることに注意する必要がある.

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